複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照2800ありがとう御座います! ( No.336 )
- 日時: 2014/10/26 17:15
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: d9r3SuxE)
040 ミカイロウィッチ帝国ルート
庶民宅・貴族街を渦巻くようにぐるりと伸びる宮殿までの長い道からはずれ、宮殿の裏に当たるあぜ道を進むと、切り立った崖がある。
切り立ちすぎた上にネズミ返しのような形をしたこの崖は何者の侵入も許さない。
海から崖を伝って宮殿に侵入するなどもってのほかなので、ここの警備は皆無であった。
また下手をすれば転落死するその場所に一般市民はおろか宮殿の住民も寄り付かないその場所に、定期的に訪れる人がいた。
その人物の薄手の服がひらひらと崖下から来る潮風にあおられはためく。
無造作に撒きつけた紅色のバンダナがトレードマークの青年、ヴィトリアルがポケットから金色の金貨を一枚取り出す。
そして何のためらいもなくそれを崖の下へと放り投げた。
きらきらと輝いた金貨は崖にたたきつける波に食いつかれて音もなく消えた。
その一部始終を黙って見つめていたヴィトリアルは、首から下がって服の下に隠れていた物に手を伸ばした。
いびつな形の銀色のキーピック。別に大事なものでもないし、捨てる機会がなくて今も持っているソレを毎度のことここに立つたびに海へ落とそうと思っているのだが、なかなかできずに居た。
今度こそ、と思い、ソレを振りかぶって投げようとした瞬間—思わぬイレギュラーに声をかけられた。
「あら、今日もまたお墓参り?」
慌ててバランスを取り、体勢を持ち直すとヴィトリアルは迷惑そうに後ろを振り向いた。
そこには毎度のこと自分をこき使うわがまま皇女と見知らぬ人物が二人。
金髪のメイドと、同じく金髪の、両手にパペットをはめている少年。
不思議な組み合わせの二人を眺めていると、皇女が口を開いた。
「三日後の王女討伐で加わってもらうお二方よ。あなたの傘下に入るから挨拶を、とね?」
いくらがんばっても14歳には見えない悪徳な皇女は、大人のどす黒さをそのまま少女の型に注ぎ込んで固めたかのような微笑を湛えている。
その腹黒さは見事にその容姿に隠されているが、一度獲物と狙われればいやでもその本性が見えてしまう。
「こちらメイドさんはリン・ミルネランス。こちらの少年はウィンテル・クロワッサン。今回は幻術師兄妹、この二人、ツヴァイにあなたが行くことになっているんだけど・・・」
メイドと少年の紹介が終わると、皇女は困ったというように腕を組んだ。
「くれぐれもツヴァイと幻術師兄妹を死なせないように。傭兵とかならいくらでも居るんだけど、幻術師や科学者は特殊で珍しいの。手に入りにくいのよね、探し出すのも困難だし」
「はいはい、わかりましたよ」ヴィトリアルはため息をつきながらキーピックをポケットにねじ込んだ。
また捨てる機会を失ってしまった。
もうちょっと借りてるとするか、と諦めたヴィトリアルは、詳しい話は中で、と言って歩き出した皇女達の後についていった。
一時期吟遊詩人の如く語られた皇女を襲撃した盗賊の噂の結末は、二年経った今でもたった三人にしか知られていない。
盗賊を鞭で引き裂いた皇女と、その盗賊を試薬で治療した科学者と、その盗賊の相方だったもう一人の盗賊だけしか、その盗賊の末路を知らない。
あえて言うのならば、その盗賊を受け止めた海だけが本当のことを知っていた。
以前から書こうかなと思ってた、ヴィトリアルさんの盗賊仲間もとい、スキンヘッドハゲの行方です
ソーサラーの本名は覚えてるのに、ハゲの本名忘れてしまったw