複雑・ファジー小説
- さぁ 正義はどっち ? 参照4000ありがとう御座います! ( No.357 )
- 日時: 2014/12/07 05:43
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: mJFNTt4F)
045 カメルリング王国ルート
「魔術ってそんなもんだよ」
ルークが、自分自身から放たれた破壊的な魔導の力の事を話せば、先輩であり魔術集団のリーダーであるユニートは軽く言ってのけた。
「もともと高い魔力を持つ古代の民の言葉だったらしいけど、現代まで伝わる呪詛は、彼らが戦争で生き残るために使った言葉だから、そのすべてが破壊の言葉なんだ」
「でも、ビックリしました…確かにあんな破壊力なら、あの修道院がバラバラになるわけがわかる気がします」
ユニートの言葉に重々しくうなづいたルークは、そっと前に目を向ける。
修道院跡地からカメルリング城に帰ってきたルークの目の前には、その高い壁に保養された庭先で白いスカートを膨らませて座る少女がいる。
薄茶色の髪を長く垂らし、可憐な容姿の心優しき姫君だが、彼女の魔力はとてつもなく高く破壊力抜群なのだ。
まだ魔導剣士だと発覚する前に彼女の魔力を見たが、自分が魔力を使った後改めてその光景を思い出すと、寒気が走る。
僕でさえあんなに破壊できたのに、彼女ときたら…比べ物にならない。
ルークの視線に気づいたのだろうか、じっとそんなことを思って見つめていると、フランチェスカが長い髪を揺らしてこちらを見た。
その海のような深い瞳で見つめられ、あわてて視線をそらす。
と、横から胡坐をかいて芝生に座ってたユニートがルークにしゃべりかけた。
この場にいない、ルークに興味津々なカルマは、今が昼間のおかげで例の研究室に閉じこもっている。シランは薙刀の鍛錬を、傭兵チームに交じって受けており、リグ僧侶とキリエ牧師もそこに交じっている。そのため、ここにはフランチェスカとルークとユニートの魔導士しかいない。
「とにかく、戦争開始まで一カ月を切ってるんだ。相手にはとんでもない手練れの魔術師がいるし、どうにかして治癒と自分のメイン属性を鍛えるしかないよ」それに、とユニートはルークの果物ナイフに目をやる。
「君は魔導剣士の卵なんだから、剣術も使えないと意味ないしね。魔法剣フランベルジュは君とフランチェスカ様にしか使えない。フランベルジュはきっと次の戦いで大きな切り札になるはずだよ—」
「———!!!」
—と、ユニートがすべてを言い切る前に、何者かのはじけるような怒涛の叫び声が城内から響いた。
ぎょっと目をむいた三人は、その声に聞き覚えがあり、ルークがはっとしたようにほとんど転ぶように立ち上がり、その名前を叫びながら駆ける。
「ミルフィーユさん?!」
つま先が居たくなるほど踏ん張って走ると、見えてくる廊下に、いつもはあんなに物腰柔らかそうにしているミルフィーユが、怒りに我を忘れて叫んでいる。
その彼を数人の兵士が屈強な体で押さえつけているのにもかかわらず、ミルフィーユはなおも暴れていた。
その光景に、一瞬あっけにとられていたルークを激しい怒りと困惑とが染め上げていき、ほとんど突進するように駆け出していた。
「何してるんだ!ミルフィーユさんを離せ!」
殴りかかる勢いで兵士に突っ込むルークの耳に、「いい加減にしないか」と厳しい声が飛んでくる。
振りむけば、驚いたことに国王がいた。眉間にしわを寄せた厳しい顔をしており、疲れ切った顔をしているように見えた。
「よくも…!」
その国王に唾を吐くような勢いでミルフィーユがうめくように言う。それに驚いてルークは目を丸くし、逆に冷静になった。
この国王、何をしてこんなにミルフィーユさんを怒らせたんだろう?
その問いに対する答えはすぐに本人の口から告げられた。
「よくもラグを牢獄に閉じ込めたな!」
「それはお前が発明を承諾しないからだ」国王はミルフィーユの怒りの叫びにさらりと返答して見せた。「返してほしければ戦争に仕える武器を発明しろ。こちらはお前の執事をどうにだってできるのだぞ」
さらに追い打ちをかけるように意地悪く言い捨てると、ミルフィーユは唇をかみしめた。
ルークは信じられないと目を丸くする。そういえば今は昼なのに、朝食も昼食も、ラグは運んで来てくれなかった。その理由が国王によって囚われ、牢獄に放り込まれていたからだったなんて…。
「どうする発明家よ。この国に尽力するのか、しないのか—どちらか選択するがよい」
この意地悪な問いに、ミルフィーユは怒りに目を細めるが、ラグの事を思えば答えは決まっている。その目が悲しそうに閉じられると、叫びすぎたせいで掠れた声をかすかに絞り出した。
「…尽力しましょう」
王は満足そうに頷くと、だが厳しく告げる。
「完成するまでは人質として執事の身柄は渡さぬ。これでお開きだ」そう言って背を向けて歩き出した王に、ミルフィーユが枯れた声で何か言うと、そっけなく「話は完成品を持ってきたときに聞こう」と言い放った。
参照4000超え感謝します!!!
一応予定していた番外を一個書いてすぐ本編に戻ります!!