複雑・ファジー小説
- さぁ 正義はどっち ? 参照4000ありがとう御座います! ( No.360 )
- 日時: 2014/12/09 00:34
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: mJFNTt4F)
参照三千&四千記念 番外編026 魔法使いの弟子
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いつだったか、明確に覚えている。時間を刻む時計の針が、消え去った瞬間を—。
がやがやと賑わう漁港の市場には各国からの名産品が所狭しと積み上げられ、ただ歩くだけで、宝箱の中身を覗き込むようなワクワクした感覚を与えてくれる。
しかし、時に宝箱の中身が危険で残酷な罠であるのと同じように、市場の一角では非人道的な商いが行われていた。
「次の商品は12番、16歳の威勢のいい娘だ」
板で組み上げられ、塩害によりところどころ腐りかけた小ぶりな舞台に両手を縄で後ろ組に縛られ、首に縄の打たれた少女が連れ出される。
肌は浅黒く、見事に編み上げられた赤毛を振り乱しながら、怒りに燃えた日溜りのような瞳を輝かせる彼女—フィア・アルタロットは現在、奴隷として売り出されようとしていた。
ここはミカイロウィッチ帝国の、いわゆる闇市と呼ばれる非合法的な物品が取引されるオークション会場であり、帝国の監視の目から隠れるように不定期にボロ小屋の中で行われていた。
今回の闇市の目玉は、異国の地から強制的に拉致されてきた肌の黒い少年少女たちであった。
「10」
「—25」
「30—」
値段が吊り上がっていく様子を横目に、売り物の彼女の内心は荒れに荒れまくっていた。
それもそのはずだろう、普通に生活していたのに、突然闖入者が飛び込んできて縄で縛りあげられ、船に揺られ遠いところまで連れてこられたのだから。しかも奴隷として売られそうになっている。
(ふざけんな!!)
暴れに暴れる仲間たちが売られていく様子を眺めていることしかできず、はらわたが煮えくり返っていたフィアは、猿轡を取ろうともがくができない。
そのうち誰かが自分を落札したようで、首に取り付けられた縄をディーラーが彼らの下に犬のように引っ張ろうとする。
それで何かがはじけた。体の中から憤怒が噴出したかのように、突如両手をきつく縛る縄が燃え上がり、首輪紐のように張った縄から、炎が綱渡りするようにディーラーにまで到達する。
「うわああ?!」
ディーラーははめていた手袋から引火し、あわてて背広を脱ぎだす。同業者たちがあわてて水を求めて走り、上着ではたいて炎を消そうとするがなかなか消えない。
やがて炎はボロ小屋の壁をぺろりと味見するように舐め、そのまま勢いよくかじりついた。
四方の壁が炎をまとい、人々が悲鳴を上げて小さな出口めがけて逃げていく。
肌の黒い同胞たちも縛られた両腕を懸命に振り回し、走っていく。
「‥‥?!」
それをまだ、何が起こったのか理解できないと、フィアは猿靴葉を外しながらきょとんと眺めていた。
3000記念の時から書こうとしていた番外です。
帝国の年齢三桁のロリ魔女アーリィちゃんとその弟子の物語です!