複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照4000ありがとう御座います! ( No.364 )
日時: 2014/12/10 19:25
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: A1qYrOra)

参照三千&四千記念 番外編028 魔法使いの弟子
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「へぇ—売られてきたってわけね」今までのいきさつを話の流れ上話すことになったフィアの言葉を聞いて、金髪のゴスロリ少女はフィアをめずらしげに眺める。
ここはミカイロウィッチの浜辺。辺りに小さな子供たちが海遊びをしており、楽しそうだ。
そんな砂浜にゴスロリ少女と正義少年とともに座っているフィアは、両手に食べ物をつかみ、話がひと段落つくと勢いよく口に放り込んでいく。なんだかわからないが、お腹がすいているのを知った彼らは食べ物をめぐんでくれたのだ。

正義少年—キオ・ユーザンというらしい—がタコスを凍り付かせた後、あのまま逃げ去ろうとしたフィアを、キオの師匠だと名乗るどこからどう見ても彼の妹くらいの年齢の少女が引き留めた。振り切って逃げようとするフィアに、その幼女…アーリィ・メルキオーゼはこうつぶやく。
「お腹がすいているんでしょ?話を聞かせてくれたら何かおごってあげてもいいわよ?」
その言葉にころりと負けて、現在に至っている。お金も知り合いもいない土地で途方にくれながら空腹に苛まされるよりは、この際どこに転んでも結果は同じと考えての事だった。しかし、彼らは今のところ、フィアに非道な仕打ちはしておらず、友人同士で浜辺でピクニックをしているような雰囲気が漂っている。
そこでフィアは先程からこちらをじーっと見る正義少年、キオのぶしつけな視線に耐えかねて、かじっていたものを飲み込むと無遠慮にキオを指差した。
「ところでさっきのは何?アタシのタコスを凍り付かせただろ」
フィアの視線を受けて、キオは首を傾げながらぼそぼそとつぶやく。
潮風が吹いて、キオの目を隠す緑色の前髪が軽くなびき、琥珀色の目が見え隠れする。
「…氷の魔術…だけど?フィアだって…炎の魔術使ってたじゃないか…」
さっそく年下のくせにフィアを呼び捨てにするキオに、ムッとしながらもとっさに出る言葉はこれだった。
「魔術?あれが?」
「そうだよ…強い魔力を持つものは…不安定で弱いけど、呪詛を唱えなくても魔術が使えるんだよ」
ほら僕も、と言いたげにキオが軽く手を振って見せる。するとキオの手が撫でた空気中の水分が一瞬で凍り付き、美しい氷の結晶がバラバラと砂浜に転げ落ちる。
ぎょっとしていると、目の前でこちらを舐めるように見つめていたアーリィが口元に笑みを浮かべながらつぶやく。
「アンタも相当の逸材ね。どう?この最強の魔術師であるアタシの弟子にならない?」
ぽかんと口を開けてあっけにとられているフィアに、アーリィは追い打ちをかけるように言う。「アンタの出身国へは大型船、しかもかなり巨大な貿易船でないと行くことは出来ないし、同乗するにはかなりの額のお金が必要になるわね。次の船が来るまでの間、何年かかるか…」
うっと詰まったフィアに、軽やかな笑みで彼女は笑う。
「もし承諾すれば、次の船が来るまでの間、アンタの面倒を見てあげるわよ?」

かくして、フィアはすぐに弟子になる決意を固め、師匠であるアーリィからキオとおそろいの黒い杖を貰い受けた。そして、1年後にやがて来る王国と帝国との間で勃発する大戦が、自分の運命を変える事をまだ知らない。




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