複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照4200ありがとう御座います! ( No.378 )
日時: 2014/12/16 01:48
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: mJFNTt4F)

043 ミカイロウィッチ帝国ルート


盗賊団がカメルリング王国についたのは、それから二日たった、真夜中だった。
エディの初任務の時と同じ壁下りルートを進んだ彼らは、王都から呼び寄せたライヤと合流を果たしていた。
「今回はエリーの代わりにメイドさんとパペット少年か」
王都外に隠された荷車から今回の潜入に必要な荷物を取り出しながら、ライヤが新入り達をしげしげと眺めて言う。
「ま、確かに今回は良家のお嬢ちゃんよりこの二人の方がうまく働けそうだしね」
言って、何やらにやりと微笑んで両手に抱えた布の塊を差し出した。
 ライヤの差し出した布は、主に二種類あった。
今回目立つべき人物には派手できらびやかな美しい装飾の衣装。そして暗躍すべき人物たちの物は旅人を思わせるフードのついたマント。
「ふーん、ぼくの魅力を引き出すのには物足りないけど、いいかも」
今回目立つべき人物は2人。そのうちの一人であったウィンデルが、両手にはめたパペットの口でその衣装をつかみ、衣装に対してあれやこれやと語りだす。
その立ち姿は彼が中性的な美少年だということもあって、それ自体が見世物になるほど絵になっている。
その一方、不機嫌そうに声を上げるもう一人の主役。彼もまたその左右の瞳が色違いであり、さらにその頭脳と嗜好が誰も追従できないくらい吹っ飛んでいる点において、十分興味をそそる見世物になるであろう人物。
「ボクのスタイルは白衣って決まってるんだけど」
ツヴァイの文句たらたらな言葉に、重々しい色のマントを着こんだクウヤが同調するように頷く。なにやら目を輝かせて顎に手を添えて、
「よしだったらイヴにその衣装を着せ—」「君は手品師を装ってもらうんだから、白衣着てたら種も仕掛けもバレバレだって」
しかしその言葉をさえぎってライヤがツヴァイに言う。
だがまだ食い下がるクウヤが何か言いかけるが、「私そんなの着ないから」と、イヴがぴしゃりとその提案をはねのける。
何やら項垂れるクウヤと素知らぬ顔で腕を組むイヴを横目に、だがもう日常風景だというようにさっさと着替えて指示を待つアーリィ達。
そんな一風変わりすぎた一団をあくびしながら眺めたヴィトリアルは、伸びをして次の指示を飛ばす。
体に絡みつくマントをさっと後ろに払いのけて、「王女襲撃決行は明日の真夜中だ。劇団員組は昼に王城で人々の注意を引いてもらう。その間に俺たち暗躍組が王女と幻術師の誘拐と魔術関連の剣や道具の強奪をはかる。最優先事項は王女だ。誘拐したらさっさとずらかるからな」
その金色の目で、何を優先すべきかわかってるよな?と言いたげにイヴとクウヤの幻術師兄妹を眺めた後、その目の鋭さをけろりと変える。
「ま、それまでは腹減ったし、何か喰って休憩でもしてようぜ」



王都の税関の兵士の目を欺いて無事王都侵入を果たした盗賊団は、やはり深夜に開店している数少ない店の一つであり一番近くにあることから、ルークやエディも通ったシュタイン亭へと足を運ぶ。
「あらいらっしゃい。今夜は大勢ね」
ライヤとは時間差を利用し他人のふりをしてそれぞれが店の戸を開ければ、シュタイン婦人は絶えない客足にうれしそうにほほ笑む。
そしてツヴァイとウィンデルの揃いの鮮やかできれいな衣装をみて、興味をそそられたようにカウンターに肘をついて尋ねる。
「その衣装は…ボウヤたち旅芸人か何かかしら?」
「ウフフ、そうです。明日、王城で王様にお目見えしようとして来たんですよ」
お気に入りの白衣を奪われて不満気味のツヴァイに変わり、犬のパペットを動かしながら意気揚々と受け応えるのはウィンデル。その愛想のよさに、子ども好きのおかみさんがほほ笑む。
すると深夜の常連客である大柄な強面の大男たちがビールジョッキ片手に二人に声を掛ける。
「へぇえ、ならちょっと何かやって見せろよ」
その言葉に、他人のふりを装って三組に分かれた、ライヤ・暗躍組・劇団員組がすこし緊張に揺れる。
しかしその一瞬の空気を破り、ツヴァイがそれじゃあとおかみさんに話しかける。
「ボクにお酒を一杯ちょうだいよ。それと沢山の水とマッチもね」
「お酒ねぇ…」
飲酒できる年齢はこの国では18からだが、それよりも幼く見えるツヴァイのその言葉に戸惑うそぶりをみせた女将さんだったが、ビールジョッキを片手にはやし立てる強面が大声で笑う。
「酒の一気飲みが芸ってか?ガキのくせに威勢良いじゃねぇか。よし気に入った!俺がおごってやるから一丁やってみろや」
まぁいいかしら、と言われて酒のボトルを取り出す女将さんに、ツヴァイは首を振り注文を付ける。
「もっと度数高いやつ。あと大量の水も忘れないでよね」
言われて目の前に出されるどんぶりにこんこんと注がれた大量の水と度数の強烈に高い酒を満足げに見て、ツヴァイはにやりと微笑む。
そして急に大男にその水をぶちまけ、酒もぶちまけると、にっこり微笑みながらマッチを擦って彼に火を放った。