複雑・ファジー小説
- さぁ 正義はどっち ? 参照4400ありがとう御座います! ( No.395 )
- 日時: 2014/12/26 12:52
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
049 カメルリング王国ルート
目の前でバランスを崩した人物は、驚いたことに左右の瞳の色が異なったミステリアスな雰囲気漂う不思議な少年だった。
瞬時に二人組の芸人の事がフラッシュバックして、思わず口走った。
「もしかして、今夜の晩餐会に出る二人組の手品師さん?」
するとすぐ、ルークの差し出された手を取ってバランスを取り戻したオッドアイ少年が「そうだけど?」と頷く。
そのオッドアイ少年の背後で、天使のようにきれいな相方として噂されていた美少年がこちらを見て微笑んだ。
その両手には猫と犬のパペットがはめてあり、今は両方ともだらりと足元に向かって下げられている。
俄然彼らに興味があったルークはすぐさま先を続ける。どうやら彼らは王都では数えるほどの規模の大きい薬師の店から出て来たようで、
「薬師の店に行ってたみたいだけど、どこか悪いの?」と声を掛ける。
何やら腕組みをしているオッドアイ少年の代わりにその背後から顔をのぞかせるまばゆいほどの笑顔を持つ美少年が答えた。
「ううん、実を言うと手に入れたいものがあったんです。でもどこにもなくて困っちゃった」
こんな大規模な薬師の店でさえ手に入らないなんて、彼らはいったい何を探しているんだろうと首をひねるルークだったが、ぶつかってしまったお詫びと、彼らに興味津々だったのとで、何を探しているのか尋ねる。
そうすれば、完全にあてにしていないような口調でオッドアイ少年が長い薬品の名前を挙げ連ねていく。
もし一般人だったら目をまん丸くしてひきつった笑みを浮かべていただろう。
しかし数時間とはいえ科学書を必死に読み漁り尚且つ発明家の仮弟子の身分だったルークはあぁそれならと柔和な笑みを浮かべて答える。
「僕についておいでよ。知り合いの発明家はそういう化学薬品も取り扱ってるから」
驚いたような顔を一瞬されたが、オッドアイ少年はすぐさま興味をひかれたように案内してよと少し生意気な口調でルークにせがむ。
遠い実家においてきた弟の事を思い出させるような口調であり、ちょうど背丈も似ていたためルークは慣れたように微笑みながら案内する。
館につけば、ついたで服装と住んでる家が違いすぎるなぁという視線にさらされるも、「ここは後継人代わりの有名な発明家の家だ」と択一説明してやればふぅんと納得される。
弟と同じ年齢のくせにこんな豪華な館を目にしてもあまり興奮して騒がないところを見ると、彼らはうわさに聞くだけの名高い手品師らしい。
そのままミルフィーユの籠る部屋を通り過ぎ、悩ましげな顔を振り切ってたどり着いた実験室兼倉庫。
錬金術師でもあるカルマなら目を輝かせただろう。少し狭めだが、円状の部屋をぐるりと取り囲む高い棚には薬品が詰まっており、部屋の中心には机と炉が設置されている。
ミルフィーユさんも錬金術に手を出していたのかな?と最初にここに来た時はそう思った。
だが現在の彼は発明を手掛け、この実験室は立派ではあるが確実に倉庫になりつつある。
飽きたのだろうか、それとも…。
扉を開けてそんなことを一瞬考えたルークだったが、オッドアイ少年が目を輝かせたのですぐ棚に向かいなあら声を掛ける。
「火薬系に使える薬品以外はあまり手を付けないから、滅多にここには来ないんだ」
言いながら彼らの求める薬品を薬瓶に詰め込み差し出す。すると彼らは結構な値段だというのに、顔色一つ変えずにお金を差し出してくる。
それにびっくりしたが、定価はこれくらいだったよね、というその言葉に本当に彼らは有名な手品師なんだなぁと思い知る。
薬品を化学変化させておく必要があると言い切ったオッドアイ少年に、「じゃあこれを着ていいよ」とミルフィーユが来ていたであろう大きめの白衣を差し出せば、彼は懐かしそうにそれに飛びつき、にやりと笑う。
なんだかこの二人組は癖のある人物らしい。すると行儀よくルークの隣にたたずんでいた美少年が、ルークの服の袖を犬のパペットで銜えて数度引張り気を引いてきた。
見れば猫のパペットをパクパク動かしながら、愛想をふりまきフランチェスカ王女の強すぎる魔力について質問してくる。
「すごい魔法使いなんですって?」という言葉に、ルークは頷いた。
この美少年の背丈が自分の弟に似ていた為、何となく懐かしくなり頬が緩む。
王女の魔力で先日の帝国の刺客が修道院を襲撃した際、王女に太刀打出来なかったことを話してやると、美少年は少し青ざめたように犬のパペットで口元を覆う。
なぜ帝国の刺客だとしっているの、と尋ねられて、ルークは話せるぎりぎりまで教える。
帝国の差し金だと揶揄する情報が伝えられた事を話せば、一瞬だけ美少年の顔に冷酷な色が差したように思えたが、次の瞬間には笑顔になっている。
そして矢継ぎ早に新たな質問をしてきたとき、オッドアイ少年が実験に失敗したのだろうか爆発が起きた。
消火後、帰る間際美少年にまた会えるかと尋ねられ、ルークは頷いた。