複雑・ファジー小説
- さぁ 正義はどっち ? 参照4600ありがとう御座います! ( No.409 )
- 日時: 2015/01/07 22:20
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
050 ミカイロウィッチ帝国ルート
王女に化けたセイリーンに諸注意を施すアーリィに、幻術師兄妹はそわそわしながら扉へと後ずさりながら声を掛ける。
「それじゃあ俺達は師匠とシランを—」既にノブに手をかけている兄妹を振り返りながら、最後まで言わせずにアーリィは頷く。
「あぁ、いってらっしゃい。今から一時間後、必ず来んのよ?」
だが返事はすでになく、視界がとらえられたのは半開きのドアが風に揺れてわずかに動いているだけだった。
彼らは彼らなりに、大切な人を救えるかもしれないのだ。以前いた大切な二人組の事を思い出し、アーリィは無表情のまま揺れる扉を凝視する。
アタシは救えなかったけれど、あの兄妹ならば例え敵にわたっていたとしても引きずり回してでも連れ帰るだろう。
「ねぇねぇ?何してればいいの?」するとセイリーンが、神妙な面持ちのアーリィの気を引こうと袖のフリルを引っ張る。
セイリーンは人好きで人恋しい余り好きになれば痛めつけてでも思いに堪えて貰おうとする性質のため、このまま黙ったままでいるのは危険である。
すでに今にも噛み付いてきそうな飢えた目でこちらを見つめる彼女に、アーリィはバルコニーに歩きながら声を掛ける。
「そうね、アタシはまだやることがあるから…大人しく座っていなさい」
言うなり、白いレースのカーテンの向こう、ツヴァイが制作しておいた人の拳程度の火薬玉を放り投げ、それに火を放つ。
落下して見えなくなったその瞬間、眩いほどの黄色の花火がいくつも空を彩り、城の前でまだ押し問答していた一般人が嬉しそうに空を指差して歓声を上げる。
その声をどこか遠くに聞きながら、アーリィは花火を黙って見守った。
「兄さん、あと一時間しかないよ…」
二人して廊下を走り、血眼になって首を巡らせる兄妹は、人々の歓声と外より聞こえてくる花火の音にぐっと唇をかむ。
この広い城の中からたった二人の人物を探さなければならない中で、一時間というのは余りにも短い物だった。
「くそ、どこにいるんだ…!」
ライヤの描いた地図は幻術師兄妹も所持していたが、描かれた部屋は余りにも多すぎて、二人で手分けしたところで見回りきることなど到底出来やしない。
「なんでもいい、二人を探そう!」悲痛な顔をして頷き合った兄妹は、まるで迷子の子どもが親を探すように、手をつないで走り出した。
訓練場、礼拝堂、騎士たちの間、小間使いたちの間、客室、食堂、外庭と、小一時間でよくも回りきれたと言えるほどさんざん走り回り、階段を駆けあがるのだが、二人の大切な人物は見つからない。
走り回る二人を怪訝な顔をしてみるメイドや騎士たちがいたが、二人は気にしないで休まずに移動し続ける。
一度は危険を承知で小間使いの何人かに「シラン様とソーサラー様をみかけなかったか」と尋ねて回ったが、下っ端の小間使いはその所把握してい無いようで、騎士の何人かに尋ねたところ「お前達小間使いが知る必要はない」とあっさりと断られてしまった。
刻々と過ぎる時間にあせりにあせっていらだちも覚えていたクウヤは殴り掛りそうになるが、堪える。
イヴも今日だけはその優しげな瞳に鋭さを宿し、無碍なあしらい方をする騎士たちに殺気立っているように見える。
「どうすればシランやお師匠様に気付いてもらえるのかな」
壁にかかる大時計から目をそらし、イヴは兄を見上げる。彼らと兄妹をつなぐものはもう、星の幻術しかなかった。
奇跡的にリンクしているとすれば、シランもイヴもクウヤもそれぞれを偲んで小さなマスコットを作り、それを大切に所持しているのだが…。
目の前に居なければ確認できない点では同じである。
「だって、早くしないと—…」
イヴの悲痛な声に、非常な鐘の音が重なり響き渡る。
はっと後ろを振り返れば、美しい装飾のされた大時計が鐘の音を打ち鳴らしている。
その文字盤に並ぶ数字は、ちょうど、あれから一時間が経過したことを告げている。
「まっ—」
まだ見つかってないのに!とイヴが叫ぶ寸前、再び花火の腹に沈むような音が連発で聞こえてくる。
窓の外を見なくても分かる、退却を命じる赤い花火が夜空を彩っているに違いない。
タイムリミットだ。俺たちは見つけられなかった。
絶望的な顔でイヴがクウヤを見上げれば、彼女の兄は感情の消えた瞳でゆっくりとイヴを見下ろした。
参照4600ありがとうございます!!
この物語で断トツで不憫ルートを突っ走っている幻術師達…不憫な第二位は誰なんだろうか?
そしてようやくセイリーンちゃんを本編で出せました!あと一人の登場で、貰ったオリキャラたち全員出演ということに!