複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照4700ありがとう御座います! ( No.415 )
日時: 2015/01/11 04:36
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

殿堂入り記念 番外編031 メイドと騎士と仲介人
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人が賑わう週末の酒場。待ってましたとばかりに休日の夜を楽しむ常連客に交じり、ミレアは友人と呑みに来ていた。
向かい合わせの座席には二人の男女が座っており、仲睦まじそうに談笑している。
男の方は黒い軍服姿のゼルフ、一年前からミレアと共に帝国の騎士団に採用され着実に成果を上げているミレアの古い友人である。
一方女の方は、メイド服に身を包みツインテールがトレードマークのリンという少女。毎回皇女の開く舞踏会や催し物に参加する伯爵家のメイドであり、皇女の護衛部隊に所属していたミレアと顔を合わせる回数が多く、徐々に友人関係へと発展した新しい友人であった。
ゼルフとリンは最近ようやく恋人同士となり、ミレアの祝福を受けて幸せそうにしている。
その二人を見て、まさかこの組み合わせになるとは思いもしなかったと、ミレアは毎回感じていた。

本当は18歳でないと飲んではならない酒を口元に運びながら、この半年の間自分が勤め上げたいわゆるキューピット役を思えば、やっと二人がくっついてほっとする。
幸せそうな二人をほほ笑みながら見つめたミレアは、ふとその当時を思い出していた。
帝国と王国との4年にわたる大戦が終了し、両親を亡くしたミレアは戦後2年の間に傭兵として腕を磨いていた。
傭兵仲間との別れや悪人の討伐を経て、1年前からようやく念願の帝国での騎士見習いとしてゼルフと共に雇われた。
ゼルフは帝国の騎士部隊の中でも精鋭である黒騎士団に入隊し、ミレアは近衛騎士団に入隊していた。
今では友人のリンとは、初任務である皇女の催した舞踏会で出会ったのだった。

優雅な伴奏に合わせて綺麗に着飾った令嬢やら貴族たちが揺れるようにワルツを踊る。
その光景を、部屋の隅で眺める小間使いたちに交じりミレアもぼんやりと眺めていた。
まだ背の小さな女の子までが高価な装飾品で身を飾り、円形のダンスホールで貴族の手を取り踊っている。
貴族や王族の血縁者でない者はどう頑張ってもその輪の中にはいられない。貴族をたぶらかすか、ものすごい努力と運で成り上がるかしかそこに入る余地はないのだ。
(でも平民から近衛騎士団にまで来たんだから、私だって良い方じゃない!)と思い直したミレアは、ふと近くに年齢の近そうな少女の姿を見つけてそちら視線を投げる。
見れば黒を基調としたメイド服に身を包む、金髪の少女がダンスホールを一心に見つめている。
何をそんなに心配そうに見ているのだろうと視線を追うと、青年の貴族風の男と踊る小さな少女に行きつく。
ポニーテールの小さな少女はよくよく見れば必死そうに踊っており、相手の足を踏まないように足元にばかり目を向けている。
しかし、疲労のためか踊る相手との身長差のせいか、ついに相手の足を踏んづけてしまった。
「ごめんなさい!」と慌てて謝るその少女を、メイドは我子を眺める親のような保護者気質の視線で見つめており、心配げに両手を握り合わせてそわそわしている。
(あのメイドの子の雇い主のお嬢さんなのかな?)
何となく主人を敬う忠実な態度に好感を持ったミレアは、会場内のざわめきに乗じてそのメイドに声を掛けた。

「あのお嬢さんが雇い主なの?」
年齢も近そうだったため軽い口調で話しかけると、彼女は驚いたようにこちらを見つめ、しばらくしてこくりと頷いた。
「はい、そうなのです…まだワルツに慣れていらっしゃらなくて…」
「そうなんだ。最近貴族になったとか?」
硬い敬語での返答だが、それでも反応してくれたことが嬉しくてミレアはさらに続けた。
もともと騎士志望者というのは男が多く、女の友人が出来にくいことが最近の悩みであったミレアは久しぶりの同性との会話に心が躍っていた。
「はい。2年前に伯爵の地位をいただいたんです。なのでお嬢様はまだこういう催し物には慣れていらっしゃらないんですよ」
ふぅんと相槌を打てば、メイドの少女は少し微笑んで「ですが弓矢と絵画には秀でているんですよ!」と嬉しそうに指を組み合わせてにっこりと笑う。
普通使用人は表面には出さなくとも心のどこかで雇い主を疎ましく思っているものだと考えていたミレアは、このメイドの表情に新鮮なものを覚えて驚いた。
自分の子どもを自慢する親のように、雇い主の少女をちゃんと尊敬して見守っている。
ミレア自身雇い主である皇女シェリルの傍若無人っぷりに飽き飽きしていた為、純粋に主人思いの子のメイドに好印象を持ち、ぜひとも友人になりたいと思い始めた。
うだうだ悩まず即行動に移すミレアはさっそく籠手で覆われた右手を差し出し、微笑みを讃えながら言った。
「私ミレア・クロスヒィルム。皇女シェリル様の近衛騎士団なの。よかったら友達になりましょ!」
メイドは突然の行動に驚いていたようだったが、その手を取り握手を交わした。
「私はリン・ミルネランスです。シュナイテッター家のメイドをしています。こちらこそよろしくお願いします」



最近知ったのですが、本文って4000文字までかけるんですね!
2000文字かと思って、まだ書きたかったのにーと思いながら内容を削りに削ってました;
4000文字ならターン制でも存分に書けそうです!ただ長すぎて読みにくいかもしれませんが…

番外編リン酸とゼルフさんの出会いはミレアさんをはさんで進んでいきます!