複雑・ファジー小説
- さぁ 正義はどっち ? 参照4900ありがとう御座います! ( No.421 )
- 日時: 2015/01/25 00:04
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
殿堂入り記念 番外編034 メイドと騎士と仲介人
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毒蛇の持つ鋭い牙のような刀身のレイピアを指揮棒の用に振り回し、ミレアは防護服に身を包む練習相手へととどめの一撃を食らわせる。軽い金属性の鎧の少女はミレアの鋭い突き攻撃に甲冑で覆われた胸を一突きされ、もんどりうって後方へ倒れた。
練習場の床へと転がった彼女は、ミレアとは別の部隊の騎士団の一人であったが、数少ない同性として親交があった一人であり、時間が余れば練習試合を行っていた。
そんな彼女と練習後の軽い間食を摂っていると、彼女がそういえばとなにやら目の色を変えてミレアの顔を覗き込むように尋ねてくる。
「例のメイドさんと黒騎士はどうなったわけ?」
目を輝かせながらゴシップをねだる彼女に、ミレアは頭を抱えてため息をついた。不機嫌な顔でサンドウィッチをくわえ、遠い目をしながら首を振る。
「駄目ねあれは」
そのあきれ返ったような答えに同僚の少女はえーっ?とつまらなさそうに声を荒げた。
「はた目から見るとすごいいい雰囲気なのに?」
ミレアは同僚の期待外れだ!という言葉にげんなりしながら自らも頷く。
現在、当の本人同士はまったくこの噂に気付いていないが、帝国の女兵士やメイドたちを中心にとある二人組の関係が注目されている。
それは紛れもなくミレアの親友であるゼルフとリンの事なのだが、噂されるようないい感じにはなっているものの、当の本人同士が全くお互いを恋愛対象として認識せず見守る外野をやきもきさせている状態であった。
女性らしく恋愛沙汰が好きなメイドや女兵士たちに「あの二人を何とかして!」と背中を押され、ミレア自身二人がお似合いであると感じていた為、ミレアは時間がとれさえすれば二人を誘って世話を焼くのだが、どうにもうまくいかない。
そもそも、ミレア、ゼルフ、リンの三人組の共通する休日の数も限られるうえに、残業で出歩ける時刻はほぼ夜。開いているところと言えば酒場や夜市程度で、デートスポットには味気ない店ばかりであるうえ、たまに盗賊や闇商人なんかがうろつく物騒な店でもある。
しかし何とか雰囲気のいい酒場を見つけ出したとしても、「剣の鍛錬があるから—」「お嬢様と伯爵様が—」などと断られる事もしばしばありミレアは毎回頭を抱えていた。
もう無理だとさじを投げだすミレアなのだが、同僚やメイドたちがそろって「もっと頑張れ」と口々に叫ぶため、止めどころが分からなくなりつつも何とかしようと動き回る日々が続いている。
そんなある日、ようやく好機がやってきた。
護衛嫌いの皇女が近衛騎士団に丸一日の休暇を与え、その護衛についていた一部の黒騎士たちにも休暇が与えられたのだ。
どうやら皇女の悪い癖である、拉致癖を発揮したくなったのだろう、興味をそそる人物を見つけたらしくいつにもまして護衛を嫌うそぶりを見せ始めた。
今回の被害者がだれかは不明だったが、朝から丸一日の休暇に久々に羽を伸ばす彼らはその被害者に心の中で感謝をする。
さっそくミレアはゼルフを捕まえ、リンの住み込む海辺にほど近い伯爵家へと乗り込むことにした。