複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照5000ありがとう御座います! ( No.425 )
日時: 2015/02/03 01:58
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

カメルリング王国ルート 051


魔導書、それは魔術に精通する者にとって貴重な品であり、まさに命なき師匠と言った存在である。
学者であるカルマによって、各地にある遺跡から採譜された呪詛の物語が記された魔導書は三十冊程度だったが、彼女が何年もかかって書き記したものであり、おそらく現存する魔導書の中で一番の出来だと断言出来るほどのものだ。
それが、いま、人質にとられている。目の前で破かれそうになっている。
ルークは果物ナイフを構えながら、唇をかみしめた。また大切なものが人質にとられてしまった。そしてまた、あの修道院のように壊されてしまうのだろうか…。
(でもここで抵抗をやめたら僕はどうなるんだ…?)
探るような目つきで目の前の二人組、似非メイドと似非執事を見るが、どうにも彼らが無傷で僕を返してくれると考えられない。そもそも、帝国の差し金の様であり、彼らが敵国の魔導士に対して手ぬるい処置をとるわけがない。
ルークは怯えたような、怒りに満ちたような目を似非メイドに向ける。
女性だからと言って、侮れない。もしかしたら容赦なく殺されるかもしれない。
「その包丁をまず捨てろ、コレを破られたくないならな」不安げに喉を鳴らせば、似非執事がさらに魔導書のページを握る指に力を込めながら容赦なく言い放つ。
その隣で、木材の棒切れと角の尖る魔導書を構えた似非メイドが息をひそめてこちらをうかがっている。
少しでも呪詛を唱えるような雰囲気を出せば、たちまち襲ってくる気らしい。
どうしたらいいのか、はかりかねるルークは唇をかみしめながら似非執事の開いたページに踊る呪詛をじっと凝視して居る事しかできなかった。

その時だった。突然何かの破裂音が連続して空気を轟かせ、城の外から人々の驚きに満ちた歓声が上がる。
その炸裂音はルークを不安にさせたものの、どうやら似非メイドと似非執事にも何らかの働きをしたらしい。
追いつめるようにこちらを眺めていた二人が視線を外し、意味ありげに目を合わせたからだ。
すかさずルークは口を開き呪詛を叫びあげた。
「『ケラウノス』!」
濃い紫の電流が空気中の水分を伝い似非メイドと似非執事の足元で急激に膨張し、突然放電しながら炸裂する。
大切な本を所持していれば攻撃してこないと思っていた彼らは、ろくな反撃もできずに雷による爆発に巻き込まれて見えなくなった。
ばらばらと本棚が砕け、床が黒こげになりじゅうじゅうと音を立てながらくすぶっている。底から立ち上る煙が視界を悪くしており、彼らがどうなったか見ることが出来ない。
「…」
ルークは30冊あるうち貴重な数冊を黒焦げにしてしまったかもしれないと胸を傷ませながら、攻撃した二人の人物の具合を確かめようと目を細めて煙の先を見る。
どうやら爆発は壁をも破壊したようで、明るい廊下から薄暗い研究室へと光が差し込んでくる。
もしかして僕、二人を殺してしまった?とやっと思考回路がそこにたどり着いた時、ゆらゆらと光をさえぎって誰かが煙の中でこちらを探る様に立ち尽くすのが見えた。
ルークはとっさに果物ナイフを構え、「『シンティア』」と唱えながら転がる木材を掴み、帯電させてからその人影目掛けて投げつける。
これはカルマの魔導書に書れていた、物体に帯電させて投げ付けた相手に電気ショックを与えるという応用技らしく、相手を気絶させる・相手を麻痺させて行動を強制停止させることが可能だが、魔力が強いものではそのまま心臓を停止させるほどの電撃を間接的に与えられるらしい。
しかしルークの魔力はそこまで強くなく、もろに直撃した人物は悲鳴を上げて床に倒れたようだった。
しかし声の主は、先程の似非メイドと似非執事とは似ても似つかないものであり、ルークは不審げに警戒しながらゆっくりと研究室の外へと足を踏み出す。
そして転がる人物を見てきょとんとした。




こんばんはコッコさん!
終章までラストスパートですね!危険ルート解禁ですっ