複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ?【第一回オリキャラ募集ストップ】 ( No.43 )
- 日時: 2013/08/01 23:10
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: TM72TTmK)
001 ミカイロウィッチ帝国ルート
潮風が辺りに漂う、真夜中。まだ風は凪いでいて、海の心地よい音が塩味を帯びて一人の少女の鼻をくすぐった。
少女は海岸沿いの適当に停泊されている船の甲板に寝転がっていた。
軽く波にゆられて、睡魔がゆっくりと忍び寄るのを感じて来た頃「エドウィンお嬢様、どこにいるのですか?」と彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「ここに居るのでしょうエドウィンお嬢様—?」
足音と気配は的外れなところを探しており、少女はため息をつく。
褐色の髪をポニーテールにした少女はその瞳と同じ空色のスカートから足を投げ出したまま、なかなか見つけてくれない人物にあきれて呼びかけた。
「ここだよ、リン」
「へっ、どこ、ですか?」エドウィンが身体を起こしてリンの方向を見つめると、整った顔立ちのメイドがこちらをやっと見た。
黒と白を基調として、胸元の紅色のリボンだけが色づいている。けれどリンの印象はモノトーンではない。
カールした金髪のツインテールと、印象的な茶色の瞳のおかげで、明るい印象になっている。
「え、エドウィン様、またそなところで寝ていらっしゃったんですか?!良家のお嬢様の自覚を・・・!」
慌てたようにリンが駆け寄ってきて、寝転がるエディを立たせようと腕をぐいぐい引っ張る。
「良家のお嬢様にいいことなんてないよ。あたしはひとりで旅に出て、芸術家になりたい!こんな箱庭から逃げて生きたいのよ」
リンの気苦労も知らず、エディは語りモードに入り、自分の夢について一方的にしゃべりだした。
「だ、駄目ですよ。一人旅なんて危険すぎます」リンは諦めたように腕を開放し、エディの顔を眺めながら言う。
エディは夢見る少女で、箱庭から出たいと願うあたり、甘い考えのお嬢様だ。この箱庭を手に入れたがる連中は沢山いる。世間を知らないお嬢様は世界に期待しすぎているのだ。
世界は汚くない、汚くするのは大人たち、と夢見ているのだ。
寝転んでいたエディが、首をめぐらせてリンを見つめ、口を尖らせた。
「危険じゃないわよ、あたしの弓矢の才能知ってるでしょ?リンの武器のマインゴーシュ(短剣)みたいに接近しないで戦えるし、狩りもできるわ」
「・・・芸術家には良家のお嬢様でもなれますでしょう?お忍びで旅行だって出来ますし」
リンは一応なだめてエディを屋敷へつれて帰ろうとするが、エディはなかなかリンの思い通りには動いてくれない。
「何言ってるの、自分の足で、自分だけの力で見た世界は芸術的なんだよ。それを見たいの、リンもついてきていいよ。だから一緒に抜け出そうよ」
「・・・そろそろ雨が降ってきますよお嬢様。お屋敷に帰りましょう」
リンはそっとそういうと、エディの傍から離れた。
エディは少し悲しそうに目を瞑ると、立ち上がり、リンの後を追いかけた。
リンがドジっこになってくれないだ、と?
ドジっこってどうすればドジっこになるんだ・・・