複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照5100ありがとう御座います! ( No.433 )
日時: 2015/02/05 17:55
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

ミカイロウィッチ帝国ルート 052



 眼下で赤色の花火が大きく夜空を彩る様を見つめ、アーリィはさて、と身を翻してバルコニーを後にする。
床で転がるように動き回るフランチェスカ王女の付き人らしき男三人組をカーテンを結ぶレースの帯で縛り上げているセイリーンに向き直る。
アーリィの言いつけで、可憐なフランチェスカ王女の姿のまま三人を縛り上げて笑みを浮かべるセイリーンは、主人の声に反応して一瞬顔を曇らせた。
「アタシはもう行くけど、言われた通りにちゃんとすんのよ?」
「もういくの?つまんないなぁ」
人間好きのセイリーンはその爪を噛みはじめ、不満そうにアーリィを眺める。
その不満げな仕草に、人間ならアタシのほかにそこに三人いるでしょ、と軽くあしらいながら変装させた王女を引っ張り起こす。
王女はその姿を隠すようにフードとマントに身を包みこみ、御者の多くが愛用する装飾を少し身に付けさせればすぐ傍目からでは王女その人とはばれないであろう。
「じゃあたのんだわよ」
言いながらアーリィは催眠状態の王女の手をとって、部屋を後にした。
「はいはーい、仰せの通りに」
閉じる扉ににこやかに手を振るセイリーンは、その姿が完全に見えなくなると置いてけぼりを食らった小さな子供のように唇をかみ締めた。
しかし、気を取り直して足元に転がる三人組を見る。人間ならまだここに三人いる。
寂しくない。
きっと無反応な彼らだってさんざん痛めつければこっちを見てくれるはずだ。
セイリーンは笑みを浮かべて転がる三人へと歩み寄った。


 赤い花火が大窓の向こうで咲けば、それは退却の合図だ。
色違いの瞳に赤い色を移りこませて、ツヴァイはウィンデルに頷いてみせる。
見世物の芸が一通り終わった彼らは、来賓席の傍で王国の音楽家達が奏でる優雅な伴奏に耳を澄ませながら次々運ばれてくる豪華な料理に舌鼓を打っていた。
鯨や魚介類などの海鮮料理が多いミカイロウィッチとは異なり、羊など放牧が特産物のカメルリングの料理は主に肉がメインだった。
煮込まれた肉、薄くスライスされた塩気ある生ハム、豪快に網焼きされたステーキなどが同じくらい大量の野菜と共に出され、どれも味は最高だった。
「それでは僕たちはここで」
ナプキンで口をもとぬぐいながら席をそっと立ち、宰相にそう告げれば引き止められる。
伴奏に気をとられ、ほとんどのものがこのやり取りには気付いていないらしい。
「まだ晩餐会は終わっていませんよ」
国王の機嫌を損ないたくない宰相がそういうが、ウィンデルが心底困った演技をして窓の外を猫のパペットで指し示す。
「予想以上の観客で、僕たちが無事に帰るにはこっそり抜け出す必要があるんです。終わりまでいたら襲われるかも・・・」
「どうかしました?」部屋の隅で行われたこのやり取りに、王族の広いテーブルから使いによこされた王子の側近がこちらに駆け寄りながら尋ねる。
宰相が国王夫妻の使い走りなら、側近は王子と王女の使い走りらしい。
「何か問題でも?」
やはり王子の機嫌を損ねたくない側近が慌てたように尋ねれば、ウィンデルが再び説明する。
「無事に帰るには晩餐会終了前にここをはなれないと・・・次の出演も決まっているし怪我でもしたら・・・」
心底困った上に暴徒に怯えるような仕草をすれば、側近も宰相も顔を見合わせて納得する。
そして涙ぐむウィンデルに負け、つには国王の許しさえ取り、まんまと二人は晩餐会から脱出した。


コッコさんこんばんはー!
リンさんは出血多量ですが、ショック状態なのでそれほど痛みは感じてないと思います・・・
生きるか死ぬかは神のみぞ知ry
コメントありがとう御座います!