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ミカイロウィッチ帝国ルート　０５３


　ここが王族専用の門だ、と案内された場所はどこか神秘的な小さなレンガ造りの小道だった。
馬車が二台ほど通れるほどのレンガの道を、両サイドに立つ壁からツタに巻きつかれながらカメルリング王家の紋章に描かれるガーゴイルのような化け物がこちらを等間隔で並び、見下ろしている。
その石造りの冷たい目に見下ろされながら、銀髪の案内人を隣に乗せて四頭の馬を操るフードの御者ことライヤは笑みを浮かべる。
門自体は金で出来ているらしく、美しい唐草模様のあしらわれた背の高い門で、銀髪の案内人はそれを門番に話をつけて開けてくれた。
「あまり声を上げたりそれと悟られないようにするんだぞ？」
銀髪のクールそうな風貌の案内人が、カンテラの灯りでその猫のように深い緑の瞳を光らせて言うと、ライヤは人当たりのよさそうな笑みを浮かべて頷く。
「えぇ、ありがとう御座います。それでは」
言って手綱を軽く振り上げ、四頭の馬をそのレンガ造りの道へと走らせる。
小気味のいい馬の蹄鉄音を響かせながら、ちょろいちょろいとライヤはフードを頭の後ろへと払いのけ、得意げに微笑んだ。


レンガの小道はカーブを描きながら数分ほどでライヤを城の裏方にある王族専用の馬車置き場に到着させた。
大きな門に再び閉ざされる広間は城とおそろいの石造りであり、きのこのように聳え立つ塔が目立つ場所だ。
おそらく敵が進入したとわかればあの塔から鉄弓が飛んでくるに違いない。
その大門から門番が不審げにハルバートを構えながらやってくるが、芸人の迎えだといえば納得して中へ通してくれた。
門番から遠く離れた薄暗い最奥へ馬車を止めていれば、そのうち仲間がやってくるだろう。
御者台であくびをしながら待機していると、さっそく仲間が現われた。
引きずるような足音を最小限響かせないようにとそっと歩く人物達は、ヴィトリアルとリンだった。
「やぁ、おかえりなさい。無事で何より—」
声をかければ、暗闇の中から「無事じゃないけどな」とヴィトリアルが現われ、よろけるリンを引きずり疲れたようにこちらを見る。
「怪我人だ。ツヴァイはいるか？」
馬車に添えつけられたカンテラに明かりをともし、その二人が血まみれなので驚きに目を張りつつライヤは首を振る。
「団長さんたちが最初ですよ。ほかはまだ中に」
リンを馬車の中に運び入れながら、怪我の具合を見るが薄暗いので良くわからない。
怪我した部分は腹部らしく、座席クッションのひとつへ腹に力が入らないように水平に寝かせる。
座らせたりすると、腹筋に力が入り内臓が飛び出す危険があり、そんな惨状を目の当たりにしたくないライヤは膝を立たせ気絶してもその体制が崩れないように余ったクッションを膝の間に入れる。
「ありが、とうござい、ます」
寝転がったままリンがお礼を言うが、あまり喋るなといわれて口をつぐむ。
「魔道書は手に入れられたけど、肝心の魔術師がいないからな」
座席の隠し扉へと魔道書を放り込みながら座席に座り込む団長は、しかしリンの傷の具合を見たあとまぁ大丈夫だろと頷く。
「このまま順調に帝国に帰れれば、貧血程度で済む。移動中に高熱を出すかもしれないが、ツヴァイがいるから何とかなるだろ」
と、「ボクがいるから何？」と話題に上る当の本人がこちらに歩いてきた。
ウィンデルはというとここまで案内してきた人物を軽くあしらい馬車へ近づけないように追い払っているところだった。
さっそくボクの白衣は？と愛用の白衣を探すツヴァイに、ヴィトリアルが鎮静剤と抗生物質を投与してやるように促せば、途端に目を輝かせた。
そして楽しげに白衣のポケットからあれがいいコレがイイと様々な色の薬剤を取り出しては座席にぶちまける。
「液体の方が即効性ならそっちの方がいいんじゃないの？」と脇から見守るライヤが口を挟むと毒々しい色から芸術品に相当するほど綺麗な色の液体瓶まで出してくる。
そのうちの二種類、本人曰く安全だから大丈夫な薬剤を服用するリンを哀れみのこもる目で見ていると、残りの仲間達がゾクゾクと現れた。
「王女サマ連れて来たわよ」
いいながらアーリィがフードで顔を隠す少女を馬車に引っ張りいれながら到着する。
「へーどれどれ？」すかさず麗人と噂される王女の顔を拝みたいとライヤがフードをまくろうと手を伸ばすが、それを割るようにクウヤとイヴの幻術師兄妹が馬車に乗り込んでくる。
苦い顔をして「駄目だった」とうなだれるクウヤとうつむくイヴの登場により全員が集結する。
そして後二人はいるはずだった馬車は座席に空席を余しながら、ライヤに手綱を取られてカメルリング城を後にした。




参照５２００ありがとう御座います！！！
以前５０００いく前に本編終わるとか言ってたけどそんな事もなかったぜ←