複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照5200ありがとう御座います! ( No.436 )
日時: 2015/02/06 18:05
名前: メルマーク ◆gsQ8vPKfcQ (ID: kphB4geJ)

ミカイロウィッチ帝国ルート 054



 夜の帳が降りきった王都は、しかし人々が賑わい酒場や民家の灯のおかげで結構明るかった。
幸いおっかけの異常興奮した観客に感ずかれなかったようで、天井は低いが比較的広い馬車の中で盗賊団たちは快適に身体を休めていた。
この分だと、王国勢に気付かれずに王都脱出が叶いそうだ。
隙間の開いたカーテンから流れていく町の景色を見て、イヴはため息をこぼす。隣に腰掛けて簡易な軽食の乗った皿を片手に、ぼうっと遠くを眺める兄と同じようにイヴも食欲がなかった。
一仕事終えて緊張の解けたほかの仲間達—晩餐会に出席してきたツヴァイとウィンデルを除いて—はさっそく軽食を平らげてまだ飢えた様にランチボックスをあさっている。
その光景を鼻先に、先ほどライヤが噂通りか確かめたいがためフードをめくり取られたため、王女はその素顔をさらしたまま座席の奥に座っている。
その麗人っぷりは噂以上であり、へぇと思わず声を漏らすほどのおとぎ話に語られる如くの麗人たる王女だった。
幻術により微笑む彼女と、彼女の足元にしまいこまれた金庫の中の魔道書こそが、今回の作戦の大目玉だった。
魔法剣と星の幻術師達は手にいられらず、本当ならば四年ぶりの再会に抱き合っているはずの二人はここにいない。
イヴはのろのろと口元に軽食を運びながら、窓の外を見つめ続けた。
指先はいつも腰に下げたマスコットへと伸びるが、その指はむなしく空を切る。
眉を寄せながら、コレが最後の望みなのだと握り締めるように拳を作った。
窓ガラスに映る浮かない顔の兄も同じ事を考えているのだろう。
何を差し出してもいい。願わくば、幸福な再会を。


王都の税関さえも抜けて、高い障壁に囲われた門を抜けると、ライヤは完全に安堵した。
そのまま数分いくとある雑木林の奥へ身を隠すように馬を停車させて馬車の中へと顔をのぞかせる。
「無事王都脱出しましたよ団長さん」いいながら車内のカンテラの明かりをともす。
眠りに落ちていた数人が迷惑そうに目をしばたき、のろのろと首をめぐらせてここがどこだか確認する仕草をする。
「俺は引き続き眺望活動しないといけないんで、王都に戻らなきゃいけないんですけど、どうします?樹海の場所まで俺が馬を走らせます?」
「おい、誰か馬操れる奴いるか?」
ライヤの提案に眠そうに首をめぐらせながらヴィトリアルが仲間に声をかけるが、馬の操れる人物達は寝たふりをする。
疲れて眠い上に、引き受ければ翌日の昼まで一睡も出来ない上に話し相手は馬だけなのだ。
かくいう自分も馬が操れるが同上の理由でやりたくないヴィトリアルが、無言でライヤを眺めればライヤは苦笑して頷く。
「じゃあ俺やりますよ。隣に女の子が乗ってればいいんですけどね」
「あの馬全部メスだから。じゃ頼んだぜ」言えばしれっとあしらわれ、おまけに座席にうずくまって眠るアーリィからも文句が飛んでくる。
「ちょっと、灯り消しなさいよ・・・寝れないじゃない」
座席に頭を預けてさっそく眠りこける彼らにやれやれと首を振りながら、ライヤはカンテラの灯りを消す。
「それじゃおやすみなさいっと」
扉を閉め、マントを身体に巻きつけながらコレから徹夜を共にする四頭の馬をかわるがわる撫で、餌をやる。
「お前たちが人間だったら一番いいんだけどなぁ」とぼやきつつ御車台に乗り込むと、眠る盗賊と王女を乗せて走り出した。


コンバンハ!コッコさん!
物語の三分の二に突入したといっても過言ではないですね。
最終章の二歩手前ってところでしょうか?
コメントありがとう御座いますっ