複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照5200ありがとう御座います! ( No.437 )
- 日時: 2015/02/06 18:35
- 名前: メルマーク ◆gsQ8vPKfcQ (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 055
馬相手に独り言を言ってもいななきしか帰ってこないため、いい加減飽きてきたライヤだったが、仲間達は皆深い眠りについており無理やり起こせば後でどんな目に会うかわからない連中のためそれは自粛する。
四頭の馬の馬力のおかげでかなりのスピードは出るものの、気を利かせて振動が発生しないように小走りに走らせる。
けれど、夜明けには樹海に到着するだろう。
思惑通り馬車は空がほのかに色づき始めた頃、樹海へとやってきた。
身体を伸ばしながら馬車の扉を開ければ、良く寝たとばかりに満足げな顔をした数人がちらほらと起きており、数分後には皆馬車から降り立ちそれぞれ身支度を整え終わる。
樹海は地面にタコが足をうねらせるように根が張り巡らされているため、馬車で通過するのは賢くない。
振動が激しくなり横転する可能性がある上、運が悪ければ馬が転び骨折して使い物にならなくなる。
リンが寝転がる座席ごと剣で切り裂いて担架のように運び出し、揺らさないようにゆっくりと運ぶ。
「それじゃ幸運を」
担架を運びながら樹海へと消えていく彼らに声をかけると、ライヤは大あくびしながら馬車へと戻り、さっそく後片付けと証拠隠滅を図る。
使い終わった変装衣装を一箇所に集め、焚火でもするようにカンテラを放って燃やす。
炎を見て馬たちが不安そうにいななくが、それを撫でて落ち着かせながら眠たげな目で焼かれていく証拠たちを眺め続け、やがてすべて燃え尽きると御車台に乗り込みカメルリング王都へ引き返していった。
二、三時間歩けば海辺の開けたところへ出るはずであり、そこには盗賊団の帰還を待つ船乗り達の野営地がある。
その船に半日ゆられればやっとふかふかのベッドに飛び込めるのだ。
「あと少しの辛抱ね」
アーリィが運ばれる担架の脇に立って言えば、鎮痛剤のためか意識のぼんやりとしたリンがかすかに頷く。
「怪我なおったらお菓子の焼き方を教えてくれる?」
ゆっくりと歩む王女の手を引きながら、イヴが久しぶりに顔を明るくして声をかける。
それに反応して、リンも少し微笑を浮かべながら頷く。
浮かない顔をしていたクウヤも、イヴの笑顔を見て少しばかり嬉しそうに笑みを浮かべ、担架代わりの座席の切れ端を握りなおす。
と、ふいに担架を囲う集団から少し後ろにいたウィンデルが、えっと声を上げた。
ウィンデルの前方を薬の実験に使えないかと熱心に草むらに目を向けていたツヴァイが頭上にハテナマークを浮かばせて振り返る。
「どうしたのさ?」
「ねぇあれって何・・・?」
犬のパペットで薄暗い森の茂みを指したウィンデルに、ツヴァイが不思議そうにそちらを見れば、何かが這っていた。
「・・・へび・・・?」
様々な形の葉が重なり合う茂みの中を、大きな細長いものがずるずると這い回っているのだ。
その物体は鱗に覆われており、かなり巨大で胴回りがある。
しかしへびと断定できないわけは、そのへびの背中にワニの歯のようなギザギザの物体がついているのだ。
「どうした?」
足を止めたツヴァイとウィンデルに、担架の端をつかみなおしながらヴィトリアルが声をかけると、途端にウィンデルが悲鳴を上げた。
いつもの人を魅了する声音ではなく、完全に心のそこから恐怖を感じての悲鳴だった。
何事かと振り返れば、
「ば、バケモノっ!」
ウィンデルが口元をネコとイヌのパペットで覆いながら叫び、あわあわと後退しているのが見える。
ツヴァイは呆然と何かを凝視しており、これは・・・などと何かに向かってつぶやいている。
「なんなの?」
アーリィが声をかけると、ウィンデルが硬直しているツヴァイの腕を引っ張って腰を抜かすように転びそうになりながら担架組みのほうへ走りより、一番背の高いクウヤの背後へと身を寄せる。
「化けものです!へび、みたいな・・・ワニみたいなっ・・・!」
「ばけもの?」
クウヤの服の裾を引っつかみ森の奥を涙ぐんで指差すウィンデルにつられて森を見れば、森の緑に混じって何かが揺れている。
「・・・っ」
警戒して息を潜めているとその物体はのそりと巨大な前足を林から伸ばしてきた。
10メートルほど離れているというのに、その鋭い黒いつめが木漏れ日に反射してギラリと光るさまが良く見える。
「ワニなんかじゃない。あんなの見たことない・・・」
なんだあれ?と行動を停止した盗賊団に、ツヴァイがぼそりとつぶやく。
どうして良いかわからないが、やばそうだということがわかると、誰からともなく後ずさりをし始める。
けれどそのバケモノはこちらを逃がす気はさらさら無い様で、のっそりとその巨大すぎる身体をあらわにした。
人の身長をはるかに越えるソイツの口にはぎざぎざの歯が並び、その爬虫類の金色の目は怒りに満ちているように見える。
そして鋭い牙の並ぶ口をカッと開き、雄たけびのような耳障りの悪い声で何か叫ぶ。
「お前たちがそうかッ!!」
「何だアイツ?!」
意味がわからないが人語を喋ったことに驚愕しながらも、殺気満々のワニのような爬虫類のバケモノがのしのしこちらに迫ってくるので、盗賊団は急いで駆け出した。
上中下でいうと、現在中と下の狭間ですかね・・・?
ちょっと修正