複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ? 参照5300ありがとう御座います! ( No.442 )
日時: 2015/02/08 17:12
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

カメルリング王国ルート 056


 晩餐会が幕を閉じる真夜中の十二時。貴族の乗り込む最後の馬車が王城から滑るように消えていくと、次第にうるさいほどとち狂った人々も減少して言った。
「やっと静かになった」
休日を奪われたジョレスが王族の門を再び閉ざし、一般用の巨大な門の前まで戻ってくると人々の波は相当減少しており、この人数ならば楽に制圧できるだろう。
そう考えながら守衛用の隠し扉を抜け、後は騎士達に任せようと場内に帰ろうとしたとき、あわただしい足音が行く手をふさぐ。
なんだか騎士達がピリピリしまくっているように見える。
何かあったのか?と辺りを見回しながら歩いていると、
「ロリコン!」
目の前に走りこんでくる人物に開口一番でそう声をかけられ、目を剥いていれば二の句も告がせないうちにすばやくまくし立てられる。
「なんかまずいことになったぞ!」
「まずいこと?」
俺のあだ名ってロリコンかよ、と頭をかきながらジョレスが繰り返せば、遠くから再び声をかけられる。
見ればルークで、血相を変えてこちらに走り寄ってきた。
「血まみれの二人組見ませんでした?!ソイツら帝国の差し金みたいで魔道書を盗られたみたいなんです!魔法剣のことも狙ってたみたいで・・・」
「は?!魔道書盗られた?!フランベルジュは?!」
顎が外れそうなほど驚いてジョレスがせきたてると、ルークは落ち着こうと努力している様で深呼吸しながら言う。
「礼拝堂に安置されたフランベルジュは無事でした。でも地属性の癒しの魔道書が・・・」
「それ、ユニートには知らせたのか?」
血まみれというとっぴな二人組みを探そうとすでに首をめぐらせながらジョレスが言うと、ルークをさえぎるようにしてノイアーが声を上げる。
四方を懸命に走りまくってくたくただというように、しかめっ面をしながら首を振る。
「それが、どこにもいないんだ」
「帝国の賊らしきものの侵入は皆にも知らせて、晩餐会に出席してる団長たちには知らせたんですが・・・ユニートさんとキリエさん、リグレット僧侶がどこにもいないんです」



 「あの三人はお前と共にいたのではなかったのか?」
「しばらくは一緒に魔道書を見ていましたが、眠気が襲ってきたので、お引取り願いました。そこからはわかりません」
兄、フランキールこと愛称キール王子の言葉に、妹であるフランチェスカ王女が口元に手をやりながら椅子に座って困ったようにか細く声を上げている。
ここはすっかり人気のなくなった晩餐会場。騎士団達に囲まれて、三人の失踪に怯えたように王女が目を伏せると、キールはそうかと目を側近へ向ける。
「例の血まみれの二人組みは見つかったか?」
氷のような冷たい声に、側近が青ざめながら首を振れば、キールは目を細め腕組みする。
王国の主要な魔導師と、妹の慕う二人組みが失踪した。そして新たに妹の騎士となった珍しい魔導剣士が進言する血まみれの帝国の差し金。
この二つは関係しているに違いない。ならば王国の三人が人質に取られたかもしれない・・・あるいは・・・。
「埒が明かない。俺も探しに—」
妹と目を合わせるように跪いていたキールが立ち上がり言い放つと、それをさえぎるように側近がそれは駄目ですと声を上げる。
「キール様は王位継承権第一位のお方、万が一があっては困ります!」
怒ったように口を開きかけるキールをさえぎり、宰相が扉の前に仁王立ちする。
「それだけは絶対になりません!」
「俺は次期国王だぞ!邪魔するな」
宰相と側近が憤慨しかけるキールをなだめようとあくせくする中、フランチェスカの傍に立ちながら干草色の髪を困ったように撫で付けたラルスが口を開く。
国王夫妻は玉座に深く身を沈ませ、またもや抱え込まれた新たな問題に悩ましげに沈黙しており、宰相やら側近と王子のやり取りに煩わしそうに眉根を寄せている。
「王国の三人と賊二人組みの捜索はすべてのものに命じております。それに一人増えたところで状況は変わらないかと・・・なので、どうか王子はここで待機していてください」
ラルスの言葉にキールは少し不機嫌そうにしているが、頭を振りつつ仕方ないとフランチェスカの傍に腰掛ける。
やれやれと宰相や側近ともどもほっとため息をついたとき、新たな問題が転がり込んでくる。
宰相の背後にある大扉を勢い良く開け、騎士の一団が駆け込みがてら「まずいことになった」と口々に言うのが聞こえ、ラルスは天を仰ぐ。
今度はなんだというんだ?



参照 5300 ありがとうございますっ!