複雑・ファジー小説
- さぁ 正義はどっち ? 参照5400ありがとう御座います! ( No.450 )
- 日時: 2015/03/03 16:49
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 056
薄暗い樹海の中を咆哮を従えて走る。
コケに覆われた足場は悪く、必死に走れば走るほど滑って体勢を崩すうえに木々の尖った枝が容赦なく素肌にひっかき傷を残していく。
けれど止まったのなら、化け物の腹の中に入る羽目になる。
「野営地はどこ?!」
後ろを振り返れば、コケに覆われた大木の隙間を窮屈そうに縫って追いかけてくる化け物が見える。
ワニを球体にしたような化け物に背を向けて走りながらアーリィが必死に叫ぶ。
「あのバケモンなに?何で追いかけてくるんだよ!」
クウヤが後ろを振り返りながら化け物に悪態をつくが、背後に気を取られ足元の太い根にけ躓いてバランスを崩す。
「兄さん!」
イヴが開いている手で兄の服を掴み、無理やり体勢を整えたおかげで転びはしなかったが、担架が大きく揺れたせいでリンがうめき声をあげる。
どうやらツヴァイに投与された薬の効果が切れたらしく、痛みに顔をしかめている。
同じくらい額に汗を浮かばせて、必死に息を吸い込みながら仲間に追いつこうと走るウィンデルが痛み始めた足を引きずって絶望的な声を上げる。
「僕…もう限界…っ足つっちゃうよ!」
その悲痛な叫びに、ポケットから零れ落ちる薬品を恨めし気に眺めながらツヴァイも同じように声を上げる。
「ボクも足が…」
最年少の14歳の二人組が悲鳴を上げると、
「迎えの船がある野営地は、こっから早くて2、3時間かかるとこにあるぞ!」
担架の端を握りしめてヴィトリアルが叫び返す。
「僕そんなに走れないです!」
ウィンデルが涙ぐんで叫べば、転びそうになり慌てて腕を大木に巻き付かせて寸でのところで体勢を保つ。
けれど体力の限界のため、そのまま大樹にしがみついたままへたり込むように座り込んだウィンデル。
涙で頬をぬらしながら、もうダメだとあきらめたようにぎゅっと目をつむってしまう。
「ウィンデル…!」
それに気づいてイヴが振り返り、と同時にふと足を止める。
「団長!あれ見て…」
そして目を細めて化け物の方へ指をさす。
尋常じゃない声に、振り返った一向は思わず足を止めた。
涙ぐんだウィンデルを引っ張り立たせながら、ツヴァイが首を傾げてつぶやく。
「何してるんだろう?」
彼らから数十メートルの距離を開けて追いかけてきていた化け物は、今はその歩みを完全に止めていた。
身を寄せ合って連なる大木が邪魔をしたようで、化け物の大きな体では後を追って追いかけられないようだ。
怒りに光る眼玉が、恨めし気にこちらを見つめて怒鳴り散らして悪態をつくように口を大きく開けている。
「良かった、これでなんとか無事に…」「ちょっと待って」
言いかけたヴィトリアルの言葉を遮り、アーリィが緊張したように両手で毒々しいピンクの杖を握りしめる。
その反応に不安そうにアーリィを振り返る一行だったが、徐々に周囲が明るくなりつつある事に気付いて目を見張る。
よく見れば、化け物のカッと大きく開かれた口元が、見る見るうちに眩く輝き始めているではないか。
なんだあれ、と凝視していると、化け物が突如雄たけびをあげた。その途端まるで炎を吹きだすように光の光線がこちらに迫ってくる。
迫りくる光線際に、化け物が爬虫類のような顔でにやりと笑った気がした。
VSヨメナイヤツ はじまりはじまり
ちょっと訂正 5〜6時間→2〜3時間