複雑・ファジー小説
- さぁ 正義はどっち ? 参照5400ありがとう御座います! ( No.453 )
- 日時: 2015/03/02 23:39
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 058
「こいつっていわゆる召喚系のバケモン?」
超巨大なワニめいた爬虫類の化け物のを見上げながらクウヤが言えば、さぁどうかしらねとアーリィは呪詛の合間から乱暴に返答する。
爆発系の魔法攻撃は化け物の体の表面で容赦なく爆発を起こすが、すさまじい衝撃音の割にあまり効いている様子がない。
「硬っい鱗ね!」
イライラしながら悪態をつくアーリィに、化け物が馬鹿にするように牙をむき出してにっと笑い、彼女を撫で斬りにしようとその巨大な前足を勢いよく振りかざす。
「〜っと!」
すかさずクウヤがアーリィを荷物のように抱え込みながら走り、鼻の先にまで迫る鋭い爪の下へと滑り込んで身をかわす。
「危ね!」
ひやひやしながら体勢を立て直し、アーリィを肩にちょこんとのせながら化け物を仰ぎ見ると、化け物が口を開いた。
先程の破壊光線かと身構える二人だったが、化け物の牙の並ぶ口からは光の柱の代わりに人語が放たれた。
「お前らはなぜ争いの種をまき散らすんだ」
背筋がぞわぞわするような化け物の声に、顔をしかながらクウヤが後ずさりする。
化け物の声が不安を誘う声色でもあり、またアーリィを抱えている間は剣で防御することが難しいからだ。
「冷戦を破綻させて戦争を始めて…」しかし化け物は後ずさりする二人を追いかけるようにゆっくりと間合いを詰めてくる。
「…再び戦争を開始させてどうするつもりなんだ」
低く唸る様に化け物の喉が鳴り、鋭い牙が憎たらしげに歯ぎしりをする。
ゆっくりと後ずさりを続けるクウヤの肩に摑まりながら、アーリィが化け物の金色の目をにらみつけて口を開く。
「聞いてどうする気?」
毅然とした態度で問い返すアーリィの度胸に呆れ半分賞賛半分でやれやれと首を振りつつ、化け物との距離をとろうと足を止めずにクウヤも口を開く。
「そもそもアンタいったい何者なんだよ?」
化け物と同じ色の瞳を細めながら、できるだけすごんだ声を出す。
「何が目的で俺たちを急に襲ってくるんだ?」
二人からの問いかけに、化け物は歩みを止めた。鋭い爪で倒壊した大木をバキバキに踏み潰していたため、彼の通った後はおがくずの道になっている。
棘のある尻尾がとぐろを巻いて、化け物は思案気にアーリィとクウヤを眺める。
二人は寡黙になった化け物を息をのんで見つめ、その隙に化け物の姿を素早く把握する。
全体的に鱗に覆われており、ほとんどと言っていいほど弱点がなさそうな爬虫類系のバケモン。
鋭い爪の物理攻撃から破壊光線のような魔法攻撃までやってのける、以外と足の速い人外生物。
この生命体がどこから生まれて、何の目的で襲い掛かってくるのか、そもそもその正体すら謎めいている。
「こんなバケモン俺見たことない」
じっとその動きに注意を払いながらクウヤが呟けば、「アタシも見たことないわよ」とアーリィも眉を寄せる。
「コイツの正体を知りたいのよね。王国の味方なのか、見たことのない魔法を使うわけとか」
「もっと突っ込むべきところはあると思うんだけど?」と軽く笑いながら言うクウヤだったが、アーリィは真顔で首を振る。
「とにかくコイツの正体が、ツヴァイみたいな王国のお抱え科学者や錬金術師の手で作成された生命体なら相当の脅威だってことよ」
まだ自然発生の化け物なら救いがあるってもんよ、とアーリィがぼやく。
「幻術で精神を崩壊させたところで、殺すことなんてできそうにないわね。そんなのが王国の手先として大量に帝国入りされたら終わりよ」
と、化け物が二人に割って入り、冷たい指で背中をなぞるような耳触りの悪い声を響かせた。
心底不思議でならないというような人間のような表情が、化け物の顔に張り付いている。
「聞かせろ。お前たち人間はなぜ、いつも戦争ばかりするんだ?戦争がそんなに楽しいか?戦争をしたら幸せになれるのか?!」
語尾は雷が落ちるような叫び声になり、化け物の尾が鞭のように二人に振り下ろされる。
耳を塞ぎながら迫ってくる太い尻尾に目を見開き、飛び込むように樹海へ身を転がせながら避けるが、化け物の応酬は止まらない。
「答えてみろ!愚か者どもめ!」
ほとんど叩き潰すような手足と尻尾の衝撃で、周囲の木々が地震の時のように揺れ、枯葉がまき散らされる。
その尻尾の連打の一打ちがクウヤの剣を持つ手に鞭を打つようにしてあたり、剣がひらりと木漏れ日を浴びながら遠くへ落ちていく。
「っ!」
手の甲に走る痛みに顔をしかめ、剣の軌跡を追うクウヤの目に、化け物の巨大な手の平が迫るのが見えた。
踏みつぶされる、と思った瞬間、肩に乗ったアーリィが小さな体全体でクウヤの頭を覆い尽くすように庇い、片手を振り上げて呪詛を叫ぶ。
「『エクスプロージョン』!」
頭をぶんなぐるような大爆発がとどろき、体全体が吹き飛ばされるような衝撃に文字通り吹き飛ばされて、訳も分からないうちに地面を転がるクウヤ。
しかしアーリィを離さないようにゴシックロリータの服をしっかりとつかみながら、すぐに立ち上がる。
「話になんないわ!」
自身が起こした爆発で、頬を煤だらけにしたアーリィがそれをごしごし拭い憮然と言い放つ。
対する化け物は、爪の間のやわらかいうろこが破けたようで少し痛そうに長い舌で怪我を舐めている。
けれどやはり大した怪我には見えない。
「戦意喪失させて尚且つ会話くらいはできるような精神状態に追い込むことは出来る?」
その問いに、アーリィを片手で支え、痛む手の甲を見ないようにしながら、クウヤは「当然」と微笑んだ。
こんばんはコッコさん!
ヨメナイヤツ戦は結構当初思い描いてたものとは大幅に異なってきました。
ので、結構悩みつつ書いてます…
コメントありがとうございます!!