複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照5700ありがとう御座います! ( No.462 )
日時: 2015/03/17 03:29
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

カメルリング王国ルート 061



 城内をとぼとぼ歩くけれど結局錯乱状態に陥った人物や、ゾンビのように歩き回る人物は一人もいなかった。
そして、まだ城の中に潜んでいるはずの帝国の差し金もまた、見つからなかった。
すっきりしないままルークはシランに向きなおる。
「いないね。ラルスさんのとこに戻ろうか…侵入者の事も新しくわかったこともあるかもしれないし」
シランは足元に投げていた視線を上げてルークを見た。弟子仲間の正体が暴かれてからというもの、ずっとこんな調子だった。無理もないが、普段の能天気なほど客観的に問題を眺めるシランに戻ってほしかった。
うん、と頷いたシランだったが、踵を返すルークにちょっと待ってと小さく声を掛けた。
「まだ全部の部屋を見て回ったわけじゃないよ」
シランの指さす方向は王族たちの住まう部屋へと続く階段。確かに王家に関する部屋は省略しており他にも入らず素通りりした部屋がいくつかあったが、さすがに断りもなしに入るのはためらわれる。
「断りもなしに入っちゃまずいかな。でも僕ならそういった部屋に逃げ込むかな。それかさ—」
ルークの隣に歩み寄りながら、久々にシランがおもしろそうに推測を口にする。
ルークとしては友人であるシランが仮初めであったとしても復活したことが嬉しかったのだが、最後の推測には冗談はよしてくれと笑い飛ばしたくなった。
「それか、貴族の馬車に入り込んで脱出するとかさ!すごくスリルがあるだろうねぇ」
「よしてよ、いくら貴族が酔ってたからと言って御者さんはしらふなんだから叫び声くらいあげられるし、門番が気付くと思うよ?」
だよね、でもこういうの考えるのおもしろいや、とシランはぎこちなく笑う。
それから二人は一端ラルスのもとへ行くことにした。報告と、一応王族の部屋の確認についてだ。

「国王様達の部屋を…?」ルークたちの報告に、ラルスは目を丸くする。
王国の名誉ある白騎士団長は数々の権限を持っているが、こればかりは一人では判断できないと困ったように顎を撫でて王族たちを振り返る。
聞き耳を立てていた王族連中が、ここの反応を返す。国王夫妻はじっとラルスを直視し、キール王子は目を光らせ、フランチェスカ王女は少し怯えたように首をすくめた。
その各々の反応を見てため息をついたラルスは、「王族の部屋の調査は俺に任せろ」とルークとシランの背中に手を添えて、扉の方へと歩き出す。
「二人とも、ここは俺に任せてツバキの手伝いをしてきてくれ。ツバキは王城の外にいる。さぁ行って…」
扉の外へ軽く押し出されると、振り返る間もなく扉は閉ざされた。分厚い扉ごしに、くぐもったやり取りが聞こえてくる。再びキール王子が捜索に参加したいとか言い出したのを、なだめるようにラルスが止めているのだろう。
そのやりとりに他人事笑いを浮かべながら、シランとルークは城の外へを歩き出す。もう眠すぎて、ちょっとしたことでも気が抜けたように笑えてしまうのが余計おかしかった。更にこの睡魔は厄介なことに、帝国の賊の侵入が大したことがないことのように思えてくる。
盗まれたのは魔導書一冊だけじゃないか、とカルマには申し訳ないがそう思い始めている輩はおそらく沢山いたに違いない。
 「あぁ、二人とも」城の外に出ると、ツバキはすぐ見つかった。深刻そうな顔で数人と顔を突き合わせて話していたようで、二人を見ると手招きした。
ツバキと話をしていたのは王家の暗殺者リリーと、同じような赤毛の女性と鎧に身を包む騎士だった。ルークとシランがその輪にちかよっていくと、赤毛の女性はリリーに何やら頷いて、少し駆け足で輪から離れていく。
「私はシュバルツにも知らせてくる。アノ仔を使えば馬より早いから…」
「えぇ、頼みますよリレーナ。それからどうかお気をつけて…」
赤い鎧をがしゃがしゃいわせながらリレーナと呼ばれた女性は心配そうなツバキに軽く微笑んで、王城の裏手へと掛けて見えなくなった。
なんとなくリリーに雰囲気が似ているなぁと見送っていたルークだったが、ツバキが話しかけてきたので意識をツバキに集中する。
「わっち達はこれより城下町へ走査線を広げるのでありんす。シュタイン亭の方面は既にジョレスとノイアーが捜査しているからして、二人には不審な人物が税関を越えなかったかどうか調査してくるように願いたい」
でも誰も王城から出るところを目撃していないんですよ、という言葉を飲み込んでシランとルークが目を合わせていると、ツバキが苦虫をかみつぶしたような渋い顔をした。
代わりにリリーがこともなげに言ってのける。
「これだけ探していないとなると、既に城からは逃亡していると考えた方がしっくりくる。そうでしょう」
赤毛を揺らして重々しいフードを取り去ると、リリーは税関まで一緒にいこうと二人に言う。
ツバキも頷いて二人に早く出発するように促したので、ルークはシランの推測が正しかったのだろうか、でも論理的に考えればその答え似たdりつくのは当たり前だ…と身も凍るような思いをしながら、夜色のマントに身を包むリリーの後について歩き出した。



ルートカウントどうしよう…
参照5700ありがとうございます!!帝国のルートがすごいことになっている間の王国ルートは、書くのがややムズカシイ…