複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照6000ありがとう御座います! ( No.477 )
日時: 2015/03/31 19:01
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

ミカイロウィッチ帝国ルート 064


 ここは玉座の間だろうか?鎖の音を響かせて連れてこられた部屋は、天井の高い、広々とした大広間のようなところだった。
赤毛の姉妹に連れられながら、黒い大扉を抜けたライヤはそこに、王族と思しき人物たちを見てここが目的地なのだと確信した。


 ライヤと赤毛の姉妹の登場に、玉座に腰かけた王族とその周囲に建ち並ぶさまざまな顔ぶれがこちらを振り返り会話を中断した。
「国王様直々にこの容疑者の尋問をお目にかかりたいとのことで、引きずってまいりました」
赤毛の姉の方が口火を切り、姉妹そろって恭しくお辞儀をした。ライヤは口に詰まった布をもぐもぐと噛みながら、その光景をじっくりと観察する。
四つ設置された玉座は皆埋まっており、騎士や使用人がその周りを取り囲むように群がっている。
なかには西洋で見ないような異国人までおり、表情の読みづらい目でこちらを見つめている。
 「ご苦労」玉座から国王が返答し、ライヤは視線を異国の女性から国王へ流した。
しばしば城内の見取り図を作るため城の中へ侵入したことがあり、たった一度だけ国王を遠目で見たことがあったが、その時よりしわが増えたように思えた。
だがその隣の妃の齢を重ねてはいるが今だ妙齢の顔を見ると、国王の皴のことなどどうでもよくなり、さらにその隣でこちらを見ている王女の顔を見れば色々な意味で尋問もどうでもよくなりかけた。
ライヤが王女と目を合わせると、王女は不安そうな顔で椅子に座りなおした。その直後、ライヤと赤毛の姉妹を追いかけて来たかのように肩で息を切らしながら、数名が玉座の間に滑り込んできた。
 振り返ってみると、シュタイン亭にいた銀髪の案内人達とシュタイン亭の女将さんとそこの常連客の一人である燃えない男、項垂れたサイオンジ宿の支配人がそこにいた。
後半の意外な三人組に不思議そうな視線を送れば、その三人はライヤの事を戸惑いの表情を浮かべて見つめ返した。
国王が興味なさげに視線を七人の人物に向けると、リレーナと呼ばれた赤毛の姉の方が紹介するように国王に声を掛けた。
「容疑者の告発を聞いた証人四人と、容疑者の事をよく知る知り合い三人です。以上で尋問に必要な人物はそろったはずです」
なるほど、とライヤが再び首を巡らせて背後を見れば、ちょうど黒塗りの扉が閉ざされたところだった。
 七人の証人がリレーナに促されて国王の側に向かうのをじっと見ている際、赤毛の妹の方が鎖を引っ張ったのでライヤはつんのめりそうになった。恨みがましそうに彼女の方へ顔を向けると、彼女は妙なことは考えるなと言いたげにライヤをじっと見降ろした。


「では尋問を開始しろ」
国王が玉座からそう声を掛けるとすぐ、リレーナが腕組みしながらライヤに尋ねた。
「まず、名前を言え。誤魔化しても無駄だぞ」きびきびしたいかにも軍人という雰囲気を漂わせ、リレーナが言う。「質問はそれからだ」
こういう上から目線な女性も嫌いじゃないなぁ、でも爪を引っぺがされるのは嫌だけど、と視線を血みどろになっている爪へ落とした。
すると、再び鎖を引っ張られ、顔を上げると妹の方がライヤが噛んでいた布の塊を引っこ抜き、久々に口がきけるようにした。
「名前は、ライヤ・メルセルム。嘘じゃない」
すぐさま証人の一人、ライヤにしつこく訪ねてきた薄紫色の髪の、人探しの少年がリレーナよりも先に口を開いた。
「あんたはシュタイン亭で、イヴとクウヤのこと知らないって言ったけどほん—」「シラン君、まだ証人がしゃべる時では—」
「—ほんとに知らないのか?じゃあなんで二人が僕を探しに城に不法侵入したって知ってるんだよ?」
シランと呼ばれた人探しの少年が、リレーナの制止を振り切って必死に声を上げた。
(あいつが、イヴとクウヤの探している子で…もしあの子を帝国へ送り返せたら、それだけでも相当な戦力強化になるな…)
「よし、いいだろう…それではシラン君、あなたに代表してもらうことにする。この容疑者に出会ったいきさつと告発に追い込んだくだりを—」
人探しの少年、シランがリレーナに命名され、ライヤに出会ったいきさつを話す間、それを黙って眺めながら、ライヤは素早く頭を巡らせて色々な可能性を考えられるだけ考える。
この少年は弟子仲間と再会するために、この国を丸ごと捨てて行けるのか?帝国側へ連れて行ったとき、果たして戦争に協力するのか?そもそも、ここで告発をすんなり認め、帝国側に不利な情報を洗いざらいぶちまけてまで、この少年が寝返る方へ賭けるなんて危ない橋を渡る必要があるのか?
 眺望者の役目として、奇妙なドラゴンの存在、王女の不在にまだ気づいていない事、しかし帝国の差し金に気付いた反応からしてもうじき戦争を仕掛けそうな雰囲気がする、などの最後の報告をどうしても成し遂げなくてはならない。告発をすんなり認めれば認めるだけはやく、自身の処刑の日が迫るわけだ。
 目を上げると、シランがちょうど行方知れずの弟子仲間が王城の中で目撃された場面を話しているところであり、多くの侵入を許したことに対して国王が憤慨していた。
(でも、この尋問でいくらしらを切ろうが、いずれにしても俺が眺望者だとばれる証拠はいくつかあるし…生きてここから出られる方に賭ける方も同じくらい勝算はないし…)
ドラゴンという異常な駒さえなかったら、きれいさっぱり確乎たる証拠は何も残さず帝国へ脱出できたのだが、予想外にもこうして捕まってしまった今、宿の爆破と告発場所からの逃走は、ライヤが不審者だという重要な証拠になっている。
 マントに隠れた鞄を意識しながら、最後のかけをするしかないとライヤは再び王女と目を合わせた。



参照6000ありがとうございますっ
そして祝六千の番外編フラグも、本編終了後に投げ飛ばしたいと思います!
あ、明日はついに、四月一日……絶対終わらん(`・ω・´)
ちょっとわかりにくかった部分を訂正