複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照6100ありがとう御座います! ( No.480 )
日時: 2015/04/06 23:03
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

ミカイロウィッチ帝国ルート 065



「つまりなんだ」人探し少年ことシランの話を聞いて、玉座に肩肘をついていた国王が頭が痛いとばかりに眉間のしわをこすりながら口を開く。
「メルセルム、お前は帝国のスパイだということになるのか?」
さすがに国王の一声は鶴の一声だったようだ。ざわめいていた人々の視線がライヤへと集中し、その口が閉ざされる。
ライヤは王女と目を合わせると、決心したように頷いた。
王女が肩を震わせて玉座に身をうずめ、その隣にいた王子がライヤをきつく睨み下ろす。
「はっきりと自分の口で言え!」
王子の一喝に、ライヤはそれじゃ遠慮なく、と少し肩をすくめてケロリといった。
「俺は帝国のスパイだ。大家さんに聞けば俺が何年スパイやってるかなんてすぐわかると思うけどね——シュタイン婦人の店にも足げ無く通ってたからわかると思うし、常連客の連中とも仲良かったし」
ちらりと挑発するように国王を見れば、国王はますますしわを濃くし、王妃も王子もそろって忌々しそうにライヤをにらみつけていた。
 人々の厳しい視線にさらされながら、ライヤは再び王女へ視線を投げながらからかう様に笑った。
「それで?また俺を拷問にでもかけます?簡単には口は割りませんけど?」
「貴様…—」
国王を愚弄しているのか?と騎士たちやリレーナがざわざわと殺気立り、赤毛の少女が調子に乗るなときつく鎖を締め上げた途端。
「父上、フランチェスカの前です!」
王子が妹の視界を遮るように立ち、咎めるように声を上げた。ライヤも含め皆が見守る中、妹の様子を心配そうにのぞき込んだ王子は、不可解だという表情を一瞬浮かべ、王女の手を取って立ち上がらせた。
「—フランチェスカを礼拝堂の方へ連れて行きます。妹には刺激が強すぎます。よろしいですね父上」
「それならば側近とサイオンジをつかわそう。行きなさい」
 一つ目の当りだ。王子と国王のやり取りにライヤは内心ほくそえみ、急にはがされた爪の傷口が痛みだしたかのようにちいさく呻いてうずくまった。
そのわずかな間に、マントの下に隠されていた肩かけ鞄を足元に投げ出し、乱暴に放り出された鞄の口から歴史書が滑り出た。一斉に視線がライヤに集まり、ついで床に転がる書物へと移った。
「なんだこれは…?」リレーナがそれを拾い上げ、怪訝な顔をして歴史書とライヤの顔を見比べた。ライヤは苦々しげな顔を取り繕い、リレーナを眺めた。
「王女サマの部屋から—あー—ちょっとお借りしただけです。元に戻すつもりが、こんな状況になったもんでね。誰かに返してもらおうと思ったんですけど—いい機会ってことで、今あなたに託しますよ、王女サマに返しておいてください」
「わたくしの…」
ライヤをまじまじと眺めながら、王女が両手を不安げに胸元で握り合わせ、声を上げた。しかしそれをさえぎり、王子が口を開く。
「フランチェスカの部屋に侵入し、さらに盗みまでしたのと?スパイが笑わせる。ただのコソ泥めが」
腹ただしげに大股で歩み寄り、王子がリレーナから書物を受け取りながらライヤに向かって吐き捨てるように言う。ライヤは憤る王子の背後に立ちすくむ王女と、彼ら王族兄弟の側近をのんびりと眺め、事の成り行きを見守った。
 やがて王子はお前を死刑にしてやるからな、と言いたげにライヤを睨むと、王女と側近、サイオンジと呼ばれた異国の女性を連れて扉を通り抜けて行った。

通り抜ける際、異様なものを見るような目の王女と再び目を合わせると、ライヤはちょっとだけ口の端を釣り上げて笑って見せた。



参照6100ありがとうございます!!
春休みが終わりそうなのに小説はまだ続きそう…
訂正!リレーヌじゃなくてリレーナさんだった…!