複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照6000ありがとう御座います! ( No.482 )
日時: 2015/04/12 18:09
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)

カメルリング王国ルート 066



 あっさりと自身をスパイだと認めた男が、今目の前にいる。コイツが帝国の差し金達を手引きしていたと考えると、嘘をつかずにすべて吐露したとしてもただでは返してやるわけにはいかない。
「ふぬけた顔をするな!王女様がいなくなった今、お前にお情けをかけてくれる者などここにいないという事を忘れるな」
ルーク等告発証人の前で仁王立ちしていたリレーナが、にやけた顔のライヤを叱り飛ばし、続けざまに厳しく尋問を再開した。
「昨夜お前が馬車で芸人の送り迎えをしたと聞いた。おそらく王都侵入を果たし、魔導書を一冊盗んだ血まみれのメイドと執事をその馬車で城から脱出させたのだろう?そして以前発生した修道院襲撃事件の時もお前が関与していたのだな?」
シランがそわそわとマスコットを握りしめて口をききたそうにするが、リレーナがひと睨みすると縮こまった。その隣でルークは心配げに目を走らせ、ラルス騎士団長のもとへ小走りに駆け付けて小さく囁く。
「尋問も大切ですけど、王国の周囲で不審者を捜索した方が良いんじゃないですか…?あのスパイ、告発する直前に税関を通り抜けていたらしいんです。ジョレスさんの話だと昨晩の夜中12時には城から出てるんです。芸人も含めて全員スパイだったら—」
妻であるリレーナを見つめていたラルスは、膝を曲げてルークの言葉を聞き、安心させるようにささやく。
「大丈夫、国外調査に騎士をいくつかさいているし、樹海を越えたあたりはシュバルツという海賊が不審者を捜索している」
それに、と少し陰った顔でラルスは腕組みをした。
「修道院襲撃事件と今回の王城侵入事件で、これ以上帝国に先手を取らせるわけにはいかないからね…戦争開戦はもうまじかだから戦力をいたるところにばら撒きたくはないんだ」
 ラルスはちらりと国王を見て、ルークの背中を押しリレーナの側に戻るように促した。
ルークは音を立てないようにシランの隣に並び、リレーナと同じようにスパイを見つめる。ライヤという男はじーっとリレーナの顔を眺めているが、なぜだか品定めしているナンパ男のような顔をしていた。
「修道院襲撃事件では、帝国の差し金は王位継承権第二位のフランチェスカ王女を襲った。それは王女の魔術の才能をはかるためだと踏んでいる。どうやら帝国の魔女よりも魔力は強いようだったな」
最後の言葉には優越感が漂っていたが、ライヤはそのようですね、とちょっと視線を外した。だがルークはそんな薄い反応よりも、記憶の中の鮮やかな魔術大戦を思い返すのに忙しかった。
 記憶の中では、修道院襲撃事件の際、現在行方不明中のリグ僧侶と帝国の小さな女の子魔女は互いに何もかも破壊するがごとくすさまじい魔術を連発していた。呪詛を手足のように操り、相手の放つ呪詛さえも理解して素早く防御もしていた。
それなのに、魔術を学ぶ初心者に分かりやすく書かれている魔導書を盗むなんて、意味が解らない。推測が頭の中を駆け巡り、渋い顔をして腕を組んだルークは、シランが不思議そうにのぞき込んでくるのも気付かずにいた。
もしかしたら、帝国にも魔術初心者がいるのかもしれない。王国には魔術師魔導士が合わせて5人もいる。帝国にだって同じくらいいてもおかしくはない。しかし、少し不安なのは、彼らが属性剣であるフランベルジュを盗もうとたくらんでいたことだ。フランベルジュは魔導士の、それも魔導剣士にしか扱えない代物だ。それを理解して盗もうとしていたなら、魔導剣士が帝国にもいるのかもしれない。
 ユニートに相談したかったが、彼は現在行方不明中。魔術師でもあり魔導剣士でもある王女に相談を持ち掛けたかったが退室してしまったため、王国の味方に付く以前ふらふらと夜間旅行をしていたカルマに相談してみようと一人納得したルークが顔を上げると、リレーナが同じぜんような考えをスパイに投げかけているところだった。
「なぜ魔導書を盗んだ?お前の所の魔女は腕が立つのではないのか?そしてフランベルジュを盗もうとしていたが、それはなぜだ?」
「さぁ?俺は下っ端ですからね。知りませんよそンなの」
「お前のような使いっパシリのスパイはまだいるのか?どんな情報を探っている?戦力や立地だろう、違うか?」
「全部吐いたら殺されそうなんで口は割りませんよ?」
リレーナの問いかけに、ニコニコ顔で答えるライヤに、ルークは度肝を抜かれた。恐ろしく度胸のある男らしいが、そのせいでこれからすさまじい目にあいそうである。
同じように呆れたようなびっくりした表情の人々の前で、リレーナとリリーの姉妹は無言で視線を交わし、リリーが太ももの周りに巻いていたベルトから小型のペンチのようなものを取り出して、姉に投げ渡した。
そのペンチをこれ見よがしに見せつけながら、リレーナは腰に手を当てて無表情のまま声を掛ける。
「処刑台に立って楽に死ぬのと、拷問の末に発狂死するのと、好きな方を選べばいい」
リレーナがペンチを片手にライヤに歩み寄ると、さすがにニコニコ笑みを消したじろいだ顔のライヤがリレーナを見上げた。
そのひきつった顔に、無理やり笑顔を浮かべて、ライヤが小さく乾いた声で「お手柔らかに…」とつぶやいた。



こんばんはコッコさん!
ライヤさんの運命は…どうでしょうねぇ←
爪は犠牲になったのだ!
コメントありがとうございます!