複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ?【第一回オリキャラ募集ストップ】 ( No.49 )
日時: 2013/08/02 19:22
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: TM72TTmK)

002 ミカイロウィッチ帝国ルート


「まったくオマエは、明日は帝国の舞踏会があるというのに、またワルツの稽古をサボったんだって?」
「・・・・・・」シュナイテッター伯爵に怒られて、エディは黙ったままうつむく。父親に怒られるのは慣れているが、憂鬱な気分になる。
「商人でありながら伯爵の地位を頂いたというのに、交渉のチャンスがある舞踏会で娘であるオマエがへまでもしたらどうなると思っている?」
エディは心の中でまたその話かぁ、とため息をついた。
商売で帝王に気に入られ、伯爵の地位を貰った父親は、エディをも利用して帝王の皇族に人気取りをしようとしている。
帝王の愛娘が開く催しに毎回引きずられていくエディは、うんざりだった。
そこで今日、ちょっとした反抗のつもりで稽古をサボったのだが、それは自分のためにならなかったようだ。
エディはちらりと父親の顔を見る。
「とにかく、明日はへまを踏まないようにするんだぞ!」
「・・・はい」
エディはため息と共に頷いた。

父親の書斎から出ると、廊下の先に心配そうにたたずむ影が見えた。
誰?と声をかけなくても解る、その人はメイドのリンだった。
「リン、どうしたの・・・?」
声をかけると、お嬢様!と跳ねるようにこちらへかけてきたが、カクンとつんのめってエディの目の前で盛大に転ぶ。
続いてガッチャーンと食器の割れる音がし、エディはその場でピタリと動きを止めた。
「リン、だいじょうぶ?」
んあーと鼻とおでこを強打したリンが床に突っ伏したままうめく。廊下が赤い絨毯で覆われていたおかげで、怪我はないらしい。
エディはゆっくりかがんで、割れた食器をスカートの裾に集めながらリンに言う。
「今動いちゃ駄目だからね。良いって言うまでその格好でいて」
はい、とくぐもった声でリンが返事する。

「はい終わったいいよ、リン」
「はいぃ、すみませんお嬢様。あぁー、お嬢様のお好きなマィンが・・・折角作ったのに」
リンが赤くなったおでこをさすりながら、涙目になって転がったマフィンを拾う。
リンが落とした食器にはいくつかマフィンが乗っていたのだ。
これじゃ食べられませんね、と肩を落としたリンの手から、エディはマフィンを取って口に運ぶ。
あぁっと驚きの声でとめられる前にぺろりと平らげる。
「えぇえ、落ちたの食べちゃ駄目ですってば!はいてください受け止めますよ!?」
メイド服の裾を広げながら真面目な顔で言うリンの手から、マフィンを奪いながら、エディはリンのその仕草がおかしくて笑う。
「あたしにここで吐けって言うの?リンの作ったマフィンを捨てるのもったいないよ!どうせ毎日掃除してるんだし、全部頂戴」
リンの作ったマフィンを捨てないのは、おいしいからもったいないという理由だけではなかった。
エディが父親に怒られるたびに、リンは慰める言葉の変わりにこのマフィンを作ってくれるのだ。彼女なりにエディを慰めてくれているのを知っているから、エディはリンが大好きで、いつか家を抜け出すときにリンにもついてきてほしいと願っていた。