複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照7100ありがとう御座います! ( No.504 )
日時: 2015/08/04 00:26
名前: メルマーク ◆gsQ8vPKfcQ (ID: kphB4geJ)

カメルリング王国ルート 071


 捕虜から一転してこちらに寝返った男−ライヤ・メルセルムによる帝国の情報は一言も聞き漏らされないようにと今や筆記者までついて記録をとられていた。
国王は両手を組み合わせ、ようやくツキが回ってきたというような顔をし、その傍らで王妃は不安げに喉を鳴らしている。
この時ばかりは謁見の間内で床に羊皮紙が引かれ、筆記用具を持った兵士たちが慌ただしく紙の上を走り回り戦略をまとめ上げている。
その様子を見て、よく寝返った捕虜を信じられるなぁ、と眉をひそめるルークの肩を誰かが叩いた。
振り返ると細長い紙の束を、だらしなくほぐされた包帯の様に抱え込んだミルフィーユだった。なんとなくこれからミイラを作るミイラ職人みたいだな、などと思っていると、ミルフィーユが忙しく走り回る騎士たちを指差した。
「ルーク君のことをユニートたちが呼んでいるようだよ…」
よく見れば騎士の合間に紙束を騎士から大量に受け取って忙しく口論しているユニートやリグ僧侶が見えた。
あの紙は、戦略会議によって練りだされた情報が書かれた紙なのだろう、ミルフィーユとラグの紙束をちらりと見れば、発明品のリストだった。
視線に気づいてミルフィーユが長いリストを掲げて見せた。
「私とラグは例の電気やら、催涙ガスやらの発明品の受注を大量にうけたからね、どうにか数日中に増産しないといけないんだ」
「そうなんですね…僕も手伝いたいんですけど、僕…騎士になったから…」
申し訳なさそうにつぶやく言葉に、ミルフィーユとラグは気にしないように笑い、紙の束を抱え直しながら出口へと足を向けた。
「暖かい晩御飯もベッドもちゃんと用意しておきますから、ルーク様もくれぐれもご無理をなさらずに!」
「ひんやりした階段や、ねじの転がる床−なんてのも選択肢にあるけれどね」
立ち去る彼らに手を振ると、ルークは踵を返し、騎士の合間を縫って職場仲間のもとへ急いだ。
 


「やぁ、ルーク君」
彼らのもとにつくなり、しばらく行方不明だったユニートがルークに紙の束を押し付けながら軽く会釈した。
国王の謁見中は基本的に私語厳禁のため、行方不明後初めてユニートやリグ僧侶と会話をすることになる。リグ僧侶もユニートも、わずかでも体を動かすと痛いという風に少し顔をしかめている。
「二人とも帰ってこれて、よかったです」
紙の束を眺めまわしながら言うと、新たに改定された戦術の紙束を抱え込んでカルマが輪に加わった。
「ルーク、来たのか。これからずいぶんと大変なことになるようだぞ」
「大変なこと?」
「あの胡散臭い捕虜の話を参考にするとだな、兵士による戦力にあまり大差はないようだ。それにしても幻術師の数は向こうが上回っているし…」
走り書きされたメモを赤い瞳でじっと見つめながら、カルマはハトの産毛のような純白の眉を寄せる。「つまり魔術・魔導士たちの働き次第で、この戦争はどちらにも転ぶ可能性があるということが、分析できる」
「フランチェスカ様がいない今となっては、ピンクさんを完全に制圧できる人はいなくなったわけですね…これは世界が終わりそうな展開ですね」
カルマの話を黙って聞いていたリグ僧侶が首を振りつつ、嘆息した。
「数こそ優っているものの、そのピンクさんを何とかしないとまずいからね。リレーナやシュバルツの捜索隊が何か情報を持ち帰るその間に、我々は何とか対ピンク用の訓練をしておかないと、間違いなく殺されてしまうよ」
実戦経験のないルーク、ユニート、カルマの三人は不安げに目を合わせたのち、はやく訓練を始めようと頷き合った。
幸いにも、僕たちは4つの攻撃属性が揃っているから、上手く力を合わせさえすれば生き残れるかもしれない、と自信なさげにルークは心の中でつぶやいた。



3カ月にわたる放置すみません!!
そして参照7100ありがとうございます!!!!