複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照7200ありがとう御座います! ( No.507 )
日時: 2015/08/10 19:08
名前: メルマーク ◆gsQ8vPKfcQ (ID: kphB4geJ)

カメルリング王国ルート 073



 黒塗りの船の甲板に椅子を引きずり出して、昼過ぎからラム酒を豪快にあおっていたシュバルツは、上空に紅色の点を見つけて望遠鏡を目に押し当てた。
拡大された飛行物体は、リレーナのワイバーンだった。
しっぽをうねらせて、くるくる回転しながらシュバルツの船目掛けて降下しているように見える。
「錨をおろせ!」
望遠鏡をのぞきながら片手で部下たちに指図すれば、船員たちはすぐに海の底に錨を沈ませる。
樹海の側の海をのんびりと回遊していた船は、スピードを落としてやがて止まった。
「どうかしたんですか、船長?」
「あぁ、リレーナのワイバーンが来たようだ」
ホントだ、と空を見上げる船員に、望遠鏡を下ろしながらシュバルツは肉を持ってこいと指図する。
「どうやらリレーナは乗ってないらしい。腹に納まりたくなきゃ、肉を持ってこい」


 甲板の上に着地したワイバーンは、ごろごろと犬が寝転がるように床をコロコロと転がり、首と胸に固定されていたハーネスを取り外した。
それを口でくわえると、肉を片手にどうしたものかと固唾をのむシュバルツに放ってよこした。
 ハーネスを受け取ったシュバルツは、しばらく訳が分からず自慢の黒いひげをいじくっていたが、ハーネスに繋がる手綱に手紙が括り付けられているのを見つけ、理解したようにワイバーンに肉を投げてやった。
ワイバーンが肉をぱくつく間、椅子に座りなおしたシュバルツは早速手紙を広げ、内容を確認した。
「樹海鉱山付近で複数の足跡発見、か」
ラム酒をあおりながら、シュバルツは眉を寄せてワイバーンを眺めた。
ワイバーンは肉を平らげ終わっており、続きを期待するような瞳でシュバルツを眺めている。
「私は海専門なんだがなぁ」
ため息をつきながら席を立ち、船室から酒のつまみのローストハムを掴むと、船室の入り口まで追いかけてきたワイバーンに放り投げてやった。
 ワイバーンが満足そうにシュバルツの軍服に猫が甘えるように額をすりつけ、気が済むと翼を広げてリレーナのもとに飛び去って行った。
いつ噛みつかれるかと内心ひやひやしていたシュバルツは、ほっとしながら部下たちに次の指示を飛ばす。
大砲の整備をしていた部下たちは、遠足に行って来いという言葉に揃って首を傾げた。


自分自身の足跡をたどって、もと来た道を引き返すリレーナの耳に、相棒のワイバーンの声が響く。
見上げれば、わずかな葉の合間からワイバーンがリレーナ目掛けて落下してくるところだった。
「よし、いい仔」
ゆっくりと着地したワイバーンに、ハーネスを装着したリレーナは早速その背中に跨る。
「王国へ帰るよ」
声を掛ければすぐに、大きな翼を目いっぱい広げて離陸した。



参照7200ありがとうございます!!!!