複雑・ファジー小説
- さぁ 正義はどっち ? 参照7200ありがとう御座います! ( No.510 )
- 日時: 2015/08/21 20:05
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
カメルリング王国ルート 075
呆然とする間もないほどのスピードで向かってくる氷の針は、徐々にその大きさを増して氷でできた剣のような鋭さを帯びている。
「しっ…『シールド』ッ!」
やっとのことで悲鳴の代わりに呪詛を叫ぶと、淡いシャボン玉のような膜がルークの体を包み込み、その丸い表面に氷の刃が当たって砕け散る。
「ふむ…」その光景を見て思案気にカルマが杖で床をこつこつと叩いた。
「『グラキエーム』」
今度は何がくるんだ?と自分の属性でない呪詛に戸惑うルークだったが、杖で叩いたタイルが急激に氷結していく様子を見てさらに戸惑う。
白い氷の小波はルークのシールドを取り囲み、牢獄の壁まで駆け抜けて牢屋全体を真っ白く氷漬けにした。
シールド越しにリグ僧侶やユニートの方へ視線を向けると、彼らは一瞬驚いた顔をしただけで訓練を再開した。
「うわっ?!」
そもそもなぜカルマが周辺を氷漬けにしたかわからないという風に目を泳がせていると、突然シールドが弾けて消失した。
途端に冷気にさらされて、吐く息も白く変わる。
攻撃らしい攻撃を受けなかったため、訳が分からず立ち尽くしていると、間髪入れずにカルマが鋭く杖をふるった。
「『リュシレーン』」
いきなり背中から何かにどつかれ、バランスを失い凍れる床に手をついたルーク。
とっさに振り向いて背後を確認すると、そこには氷の柱が斜めに床から突き出していた。
もしこの先端が鋭ければ、今頃冷たい氷に突き抜かれて絶命していたに違いない。恐る恐るその氷に触れ、息をのむと、動悸が速くなる。
ラグが無事に戻ってきたことによりしばらく眠り込んでいた暗い気分が、また目を覚ましたように思える。
「『ラディエル』!」視界の端でカルマが身動きするのを捉えるとすぐに、ルークは早口で思いついた呪詛を唱える。
ルークの反応に怪我でもしたのかと声を掛けようと思っていたカルマはいきなりの魔術攻撃に目を見開いたが、すぐに体が反応してシールドを張って防いだ。
ムチのような炸裂音で一筋の雷がシールドに落ちると、うずくまっていたルークが素早く立ち上がる。
なにやら物騒な顔つきをしており、カルマは反撃する前のほんの数秒の間、その顔つきを驚いたように見つめた。
「『リュシレーン』」
さっと凍り付いた杖を自在に操ってルークを取り囲むように氷の柱を聳えさせ、氷の檻を作り上げようとすると、ルークも負けじと反撃に出たようだ。
雷属性の呪詛を叫び、氷の檻を破壊しようと立て続けに落雷を起こしている。
しかしカルマの魔力の方がルークの魔力よりも高いため、なかなかはかどっている様子はない。
それどころか、的外れな方向へ雷が落ちていく。
(フランベルジュの魔力をうまく引き出せないのだろうか…?王女様の魔力を引き出せたら、あんな氷の柱など一発で吹き飛ばせるのに…)
もっと集中するようにと声を掛けようとしたが、突如ルークを覆い隠していた氷の柱が砕け散った光景を見て、満足げに頷いた。
そして試しに1つ、渾身の魔力を込めた小さなシールドを1つ、ルークの側に出現させた。
それに気づいたのか、四方八方に雷を落としながら、ルークが大儀そうにフランベルジュを反動をつけて振り上げ、そのシールドをすっぱりと真っ二つに切断した。