複雑・ファジー小説
- さぁ 正義はどっち ? 参照8100ありがとう御座います! ( No.521 )
- 日時: 2015/10/15 21:19
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 074
階段を駆け下りてアジトに飛び込むと、リンが絨毯に仰向けに転がっているのが見えた。
「リン!!」
リンの側で膝をつき、包帯で覆われた腹部と青ざめた顔色を眺め、こちらまで血の気が失せる気がする。
投げ出されたように垂れている手におずおずと触れると、その冷たさに唖然とした。
「来たか、イヴとウィンデルはどうしたんだよ?」
声を掛けられてはっと顔を上げると、肘掛け椅子にクウヤが座っており、その脇に本を抱えたツヴァイが突っ立っている。
今までそこにいることに微塵も気付かなかった。
「なんでリンがケガしたの?!助かるの?!」
なぜリンがここにいて、なぜ怪我をしているのか、訳が分からない。
リンは今頃、父さんと一緒に海辺の屋敷で平和に暮らしているはずなのに…。
ふと、握りしめていたリンの冷たい手が、かすかに動いた気がして慌てて声を掛ける。
「リン、リン大丈夫?!」
「エディ、これ」
リンの顔を覗き込んでいると、横からツヴァイが本を差し出してきた。
これが何?今は本なんてどうでもいいと言いたげに睨み上げると、「治癒の魔導書らしいよ」と押し付けられる。
「どういう原理かわかんないけどさ、たぶん魔術なら傷ついた内臓も治せるんでしょ」
「な、内臓?…リンは…何があってなんで—」
腹部の包帯が解かれると、内出血して色の変わった皮膚が見えた。ぎざぎざの傷口が雷のあとの様に縫われている。
思わず絶句したエディは、リンの手を強く握りしめた。
「これ治せるのか…?」
肘掛け椅子からリンの容体をみてクウヤが呟くと、エディは唇をかみながら魔導書を開いた。
クウヤと同意見だったが、なんとかしてでもリンを救いたいと思った。
一瞬何と書いてあるのか理解できずさっと血の気が引いたが、唐草模様が徐々に意味を持ち始めるとほっと安堵する。
誰が記したのだろう、不思議なことにものすごくわかりやすいと、なぜかそう感じることが出来るほど丁寧に記されている。
幼児向けの絵本を大人がんで、内容をごく簡単に理解できるような、そんな感覚がするのだ。
と、目の前の扉が開き、ウィンデルを引き連れてレイが部屋に踏み込んできた。
その顔は厳しく、リンを見るとさらに渋面になった。
「兄さんにもこのこと…知らせて来る」
「イヴはどうしたんだ?」
さっと身をひるがえしたレイに、クウヤが慌てて声を掛け、痛そうにわき腹を抑えた。
それを横目で一瞥した後、レイはウィンデルの肩を押して扉を素早く潜り抜けた。
「それはウィンデルに頼んで。私はいま、忙しい…」
「−行っちまった…」
半開きの扉をうらめしそうに眺めたクウヤは、仕方なしにウィンデルにイヴの行方を尋ねるのだが。
ウィンデルは変色したリンの腹部を見るなり絨毯にぺたりとへたりこんでしまい、首を振るばかりで一向にしゃべる気配がない。
「そういえば君、あの人形どうしたの?」
興味津々に魔導書を覗き込んでいたツヴァイが顔を上げ、小首を傾げながらウィンデルを観察する。
言われてみればそうだなと、クウヤも肘掛け椅子からウィンデルに目を落とす。
「そういやあのパペット持ってないな。どこかに落としたか?だから元気が無くて無口なんじゃないか?」
元より兄であり幼少のころから妹であるイヴの面倒を見ていた為、面倒見のいいクウヤが気づかわしげに尋ねる。しょんぼりしたウィンデルの表情に、大切なものを無くしてふさぎ込むイヴの面影がダブってみえる。
「よしツヴァイ」こくんとウィンデルが頷くのを見ると、クウヤが張りきった声を上げた。
なに、と反応するツヴァイに「針と包帯をだせ!新しいぬいぐるみをウィンデルに作ってやる!」
痛めていない方の手でウィンデルを指差してそう言った。
「いいけど…縫えるの?そんな家庭的には見えないし、君片方の手首は怪我してるし」
白衣から細い針と包帯を取り出してクウヤに差し出したが、「お前が縫え」と当然のように言われ、色違いの目を丸くした。
「ボクが縫うの?」
「リンの怪我だって縫えたんだから、人形ぐらい縫えるだろ」
その言葉に閉口して、怪我を縫い合わせる要領で出来上がったパペットは小さな白猫になった。
「ボクが街に降りるとよく会う猫。いつも何でか生魚を持ってくるんだ—はいこれ」
包帯でできた縫い目だらけの白猫を、ウィンデルは黙って抱え手にはめた。
途端に、「えへへ二人ともありがと、これでようやくちゃんと喋れるね」と満面の笑みを浮かべた。
急に表情豊かにしゃべりだしたウィンデルを、ポカンと眺める二人にウィンデルは今まで黙っていた分を埋め合わせるように口を開く。
「僕、物心つく前からずっと人形劇団にいて人形劇の練習してたから、パペットがないと喋れなくなっちゃったんだ。人形劇は大得意だけど、ジェスチャーは得意じゃないし、頷くにも限界があるよね」
言いたいだけ言うと、うんしょ、と気が済んだようにウィンデルはかわいらしく立ち上がって照れたように笑った。
「ちょっと喋りすぎちゃった。僕、メイドさんからパペットを返してもらいに行って、イヴも探してくるね」
「あ、あぁ頼んだ…」
完全復活し、天使の笑みを浮かべたウィンデルを見送り、しばらく無言で顔を見合わせた直後、エディが声を張り上げた。
「やっと見つけた…これよ!」
そして魔導書を放り出して、リンの側にしゃがみ込み、願いを込めるようにリンの手を握りしめて囁いた。
(お願いだから、上手くいって…!)
「『ミレレラティール』」
参照がっ
8000改め8100行きましたっ
ありがとうございます!!!