複雑・ファジー小説
- さぁ 正義はどっち ? 参照8200ありがとう御座います! ( No.525 )
- 日時: 2015/10/19 21:51
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 075
ヴィトリアルが長い階段を下りて、ため息とともに扉を開けると。
横たわるリンにエドウィンがすがりつき、泣きじゃくっている様子が見えた。
リンが死んだのかとぎょっとしたが、エディの背中をやさしくなでるリンの指が見えて安心した。
リンを覗き込むと、力なくゆったりとまばたきを繰り返す眼は少し涙ぐんでいた。
「上手くいったみたいだな」わんわん泣く背中に声を掛けると、「次はクウヤを治してやれ。皇女サマからのご指名だ」
リンに抱き付いたまま離れないエディを、リンがゆっくり押し戻した。
エディの真赤な目を覗き込み、かすれた声で安心させるようにリンは囁く。
「おじょ…さ—ま、私はへいき…ですか、ら」
「うん、うん」
鼻をすすりながら涙をぬぐうと、エディは名残惜しそうに腕をほどいた。目を真っ赤にしたままクウヤを振り返り、魔導書を開いて何か確認をした後しゃくりあげるのを我慢して口を開いた。
「『リフル』『ミレレラティール』」
「っ!」
ぱきりと、骨の音がした途端クウヤが痛そうに呼吸を止めた。ツヴァイがクウヤの腹部に素早く手を当てると、おぉと感激したように声を上げた。
「骨が動いてる!きっと一度骨が折れたから、元の位置に戻ろうとしてるんだ!」
へぇそれじゃ新しい組織が作り出されるわけじゃないんだ、とブツブツつぶやいたツヴァイは、一瞬戸惑った顔をしたが、あっと声を上げ考えを押しやった。
「治った。骨、くっついたみたい」
触診した感触で骨が元の位置に戻ったのを感じ取ると、クウヤが額の汗をぬぐって深く息を吐いた。
「おー、痛ぇ。無理矢理骨の位置を治された感じだ」
「よしじゃ、皇女サマんとこ行くぜ?待たせると新しい怪我が増えることになるからな」
腹部を撫でてクウヤが立ち上がると、ヴィトリアルが扉を開けて先に階段に足を掛けた。
「エドウィンお前は魔術の習得をしとけ」
言うと、踵を返してさっさと階段を上がって行った。
「リン…」
床に転がったままのリンに、エディは恐る恐る声を掛けた。クウヤの様に治療後すぐに動き回らないので、本当に治ったのか不安でしょうがない。
「リンも痛かったの?…リン?」天井を見つめ続けるリンに恐怖を感じ、手元の魔導書を強く握りしめた。
魔術が効かなかったのだろうか?閉じたのは皮膚だけで、内臓はいまだに出血をし続けているのではないか?
それではリンは、死んでしまう…?
「ツヴァイ、リンは治ったのかな?それともし、んじゃうの…?」
尋ねながら語尾がもう涙声になると、何か目を細めて考え事をしていたツヴァイは泣いたってしょうがないじゃないか、と肩をすくめた。
そして立ち上がると、拷問部屋から紙束とインクとペンを取り出してきてエディの側に腰を下ろした。
「もしかしたら、リンは死ぬかもしれない」
「!」
ショックすぎてその根拠を聞き出すこともできず、ただ目の前が真っ暗になる感覚に襲われていると、ツヴァイが絨毯に寝転がり頬杖をついた。
「それを調べるには、君が魔導書を翻訳してくれなきゃいけない。ボクには読めないしね。だけどその前に…」
魔導書をぺらぺらめくる手を止めると、また物思いに沈むように床の一点をじっと凝視した。
その表情が今のリンと同じように見え、恐怖感をあおる。いったい何を考えているのか分からない。
「その前に、ボクの考えが正しいかどうか、確かめなきゃいけない」
「確かめる?」
「うん」
白衣の袖をめくると、ツヴァイはペンを握りしめ深呼吸をした。何をしようとしているのかと不安な顔で見守っていると、ツヴァイは思い切ったように手を引いて、自分の腕をペンで素早く切り裂いた。
参照8200ありがとうございます!