複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照9600ありがとう御座います! ( No.533 )
日時: 2015/12/15 18:54
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: A1qYrOra)

カメルリング王国ルート 077


 「『シールド』!」
吹き付けてくる強風にフロックコートを舞わせながら、なんとか反撃のチャンスをつかもうと壁状のシールドを出現させる。
透明なその壁の向こう、雪の中にたたずむリグ僧侶がメイスを軽やかに振りかざし、ユニート目掛けてカマイタチ並に鋭い風を投げつけ続けている。
「…っ」
シールドへと風が乱暴に投げつけられるたび、寄りかかる切り傷だらけの体に振動が走り少し痛い。
すっぱりと綺麗に斬られるおかげで血は出ていないものの、カルマの起こした氷点下の空間が傷にしみて疼くような痛みを起こす。
「『チェロット』」
カルマに以前人間の皮膚でできているんじゃないかと言われた黒い表紙の魔導書を大切に抱え込み、癒しの呪詛をつぶやき傷口をふさぐ。
リグ僧侶の巻き起こす風が、牢屋の床に降り積もる純白の雪を四方へ散らし、まるで吹雪が起こっているような景色を作り出している。
その寒さの真っただ中で傷の癒える痛みに顔をしかめると、こんな寒さはもうごめんだとばかりに、強烈な呪詛を放った。
「『インフェスティオ』っ!」
かざした手に導かれるように炎の渦が立ち上り、静かに降り積もる雪を荒々しく溶かして辺り一面を赤く染め上げながら、最終的にその矛先はリグ僧侶へと牙をむく。
後方でルークがびっくりしたような声を上げているが、リグ僧侶は顔色一つ変えずにメイスをすき上げるように掲げた。
「『アーフヴィンド』」
 たちまち上昇気流が躍り上がり、燃える物が何もない天井へと炎を突き上げる。しかし魔力で燃え盛る炎のため、通常の炎の様にすぐに消えず、天井にかかる蜘蛛の巣に噛り付いて炎の雪を降らせる。
ふわりふわりと燃え上がりながら宙を漂うその炎は、ユニートが指先を一振りすると、円を描きながら次第に炎の竜巻となりリグ僧侶を包み込み始める。

 紅色の炎が彼の姿を覆い尽くすが、間髪入れずに内側から食い破られるように渦が四方にはじけ飛び、メイスを振り上げた姿が見え隠れする。
「『シャイド』」
切り裂くように放たれた風でユニートの築いていたシールドにヒビが走り風に舞い散りながら砕け散る。
シールドを突き破った風を横っ飛びで避け、続けざまに炎で反撃するが、蝋燭の炎を吹き消すように次々に消されていく。
さらにメイスをくるりと回転させ、立っているのも困難なほどの風の渦を巻き起こし始める。


 相変わらず隈の目立つその浅黒い顔は、余の末を常に案じ続けるあまり顔色が悪いが、まだまだ余裕そうだ。
その様子に一瞬眼鏡の奥で考え込むように夕焼け色の目を細めると、ユニートは渾身の魔力でいくつもの火柱を牢屋中に立ち昇らせた。
呪詛を唱えるとたちまち火柱が激しく燃え盛り、天井を舐めあげるどころか牢そのものを焼き尽くすほどに四方へその魔の手を伸ばす。
事実鉄格子にかみついた炎がその鉄さえ赤く発熱させ、もう少しで牢獄そのものを破綻させる寸前まで追いつめる。
「あぁ…まるで聖書にかたられる世界の最後の日のようです…こうしてわれわれの世界は塵と化すのですね…」
そんな悠長なことをぽつりとつぶやくと、その炎の柱を包み込むようにシールドで覆い尽くした。
「な…」
渾身の魔力を魔導書から引き出して、おまけにリグ僧侶の魔力も利用して紡ぎだした炎の柱が無理矢理シールドに封じられるのを見て、思わずユニートは嘆息した。
 今度こそはリグ僧侶を超える魔導を放ったと思っていただけに、完全にシールドに閉じ込められた炎を見るとさすがに疲労感で肩が落ちた。
しかし、シールドで封じられた炎がそのシールドに噛み付いて手を伸ばすようにところどころ漏れ出しているところを見ると、それほど絶望的ではないこともうかがえる。
 もう少し頑張ればもしかしたら…と魔導書を強く握り、
「『ディフュール』!」
滅多に使わない呪詛を叫んだ。
それが添加剤となり、破裂音と共にリグ僧侶の作り上げたシールドが砕け散り、暴発を起こしたように閉じ込められていた炎が雨あられと四方八方へと飛散する。
「おや…」
破られてしまいましたか、と天井から降り注ぐ炎の雨をシールドで防ぎながら再び呑気に感想を口にするリグ僧侶。
しかし無傷である彼がメイスでその炎の雨を消し去ろうとした瞬間、
「へぇー、魔法使いってすごいね…」
 ふと溶けかけた鉄格子越しに、シランが天真爛漫にあっけらかんと笑うシランが炎の熱線から身を守るように手を翳しながら立っていた。
「シラン君?」
「ユニートさん、国王様が訓練はもうお開きにして謁見の間に集まれって言ってますよ」




うわあああ
すごい放置していたのに、参照が9600ってすみませんありがとうございます!!
テストが終わって一息つきすぎて謎の風邪をひくなどいろいろあってなかなか更新してなかったんですが
とにかく、9600回も閲覧ありがとうございます!