複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照11200ありがとう御座います! ( No.547 )
- 日時: 2016/03/13 17:12
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
ミカイロウィッチ帝国ルート 079
宮殿の上部で未曾有の駆け引きが行われているその時、宮殿下では一人の小さな少年が三つのパペットを手に、廊下をうろついていた。
愛用の犬と猫のパペットをメイドの給仕室から返してもらった後、イヴの事を探していた。
「イヴはどこに行っちゃったのかな?」
手あたり次第の扉を開けてひょっこり覗いているのだが、そこにイヴはいない。
「ねむい…」
もう夜深い時間帯であり、ようやく安全地帯に帰ってきたという安ど感のため、ウィンデルは眠さにふらふらとした足取りで壁に手をついた。
先程からあくびが止まらず、少しだけなら眠ってもいいかな、と眠たげな眼できょろきょろと首を巡らせる。
シェリル皇女の手駒となった今では、宮殿の一室を自分自身の部屋として与えられているが、ウィンデルのいる階からはいくつもの階段を上らなければならない。
更にベッドで眠れば仮眠どころではなくなってしまう。
「あ…」
眠い目をこすりながら歩き続けていると、立ち並ぶ扉の一つが誘う様に開いていた。
ひょっこりと覗き込むと、騎士や兵士たちの談話室らしかった。いくつかの椅子がテーブルを囲う様に配列されている。
壁沿いには寝椅子が数脚おいてあり、疲れた騎士が一人寝椅子にもかかわらず足を組んで座りながらもたれて眠っている。
白い軍服に、金糸がまんべんなく使われているため、貴族出身の騎士なのかもしれない。
「お邪魔しまーす…」
起こさないようにそっと足を忍ばせて入室し、寝椅子の一つに腰かけると、長椅子に座って小声で会話していた騎士達がウィンデルの方を一瞥したが、追い出されることはなかった。
少しだけ、とウィンデルの体に余るほど広い寝椅子に横になると、縮こまって目を閉じた。
目をつぶると、ここ数日間の光景がよみがえり、良く生きて帰ってこれたとパペットを抱きしめる。
出発した時は、崖を下るのが大変だったし、王都についてからはばれないように芸人のふりをするのもちょっと疲れたけど…、王都を自由に動き回れたのはちょっと楽しかったかも。
晩餐会はごちそうおいしかったし…でも、と目をつむりながら眉をしかめる。
帰りは化け物に追いかけられ、あそこで本当に死ぬかと思うほどの恐怖体験をした。
話によれば、アーリィとクウヤの二人が倒したという。
(もうあんなのは体験したくない…そもそもぼくは、劇団員で…愛想ふりまくのが仕事で…—)
うとうととそこまで考えて、現実よりもはるかに安息の夢の中へと、意識を手放した。