複雑・ファジー小説

さぁ 正義はどっち ? 参照11900ありがとう御座います! ( No.571 )
日時: 2016/08/02 23:51
名前: メルマーク ◆gsQ8vPKfcQ (ID: 6COmfyOE)

カメルリング王国ルート 086



 ミカイロウィッチ帝国の断崖と言っていいような宮殿裏に無理矢理停泊した船は、四方の壁に杭を投げ、片っ端から私板をおろして船をすぐさま固定した。
「板を落とせ!!」
帝国勢がわめきながら渡り板を海へと落とそうとするが、素早く板を渡った王国騎士が剣を振り回しながら蹴り飛ばし、怒涛の流れで残りの騎士達も後に続いていく。
「ここで食い止めろ!」
白銀に輝く剣を指揮棒の様に振り上げた帝国の騎士が叫ぶと、甲板で剣を抜いたラルスが、負けじと叫び返す。
「敵を制圧しろ!」


 「ふっふふっ」
ノイアーは目の前の光景に目を輝かせて、思わずせりあがってくる笑みを抑えきれずに声を漏らした。
金属のはじきあう音、ガラスの砕け散る中で聞こえるつんざく悲鳴と、荒々しく響く怒号。
そしてなにより、はねるように飛び散る、鮮血。
血が湧きたって背筋がぞくぞくする。
「ノイアー、何してんだ、行くぞ?」
恍惚の表情で鎌を握りしめていると、後ろからジョレスが走り寄ってノイアーを担ぎ上げる。
「お前の鎌はこんな狭いところには不向きだからな。さっさと次の、広いところで戦おうぜ!」
文句を言いかけた口を閉じ、ノイアーは同意するように勇ましい顔をして頷く。
「ではわっちらも参りましょう」
そんなノイアーの表情に微笑みを浮かべたツバキが、着物の裾を襷で素早く結びあげ凛と声を張り、争いの最中へと足早に飛び込んだ。


 剣を構えながら周囲を見回して思った感想は、帝国の騎士達は本来の実力を発揮できていないな、ということだった。
確かに不意打ちの奇襲攻撃は成功した上に、無理矢理上陸した場所は大勢が広がって戦うことのできない場所だったためだ。
(しかし、この有利な状況も、戦開始からせいぜい半時間ほどしか持たないだろうな)
小首を傾げて、目の上にかかるフードを押し上げる。
その視線の先で、早くも安全地帯を確立しつつあるラルスたち一団は、迎え来る帝国の騎士達を叩きのめしている。
(ラルスはどういう戦力で攻め上げるんだろう?以前教わった塵芥…)
キール様、と声を掛けられて振り返ると、リリーが七頸をさっと払い、血を弾き飛ばしたところだった。
 「さぁ、こちらへ」
足元に散らばった血の模様に息を呑むと、キールは差し出された彼女の手を掴む。
「私たちは彼らとは別ルートで政略していきます」キールを誘いながら、リリーは何を思ったか、更に細い崖の畦道を進み始めた。
そしてそのまま華麗なしぐさで波で洗われている岩場に飛び降りると、ついてきてくださいと言う様にキールを見上げた。
「…」
マントの裾をもてあまし、若干もたつき岩場に滑り落ちそうになるが、なんとか面目を保ったまま岩場に着地できた。
 しかし、数分も歩かずに、リリーが再び岩場に足を掛け素早く崖の上に登って行くのを見て、目を丸くしてしまう。
「こちらにずいぶん前に廃止された隠し通路があるとのことです。完全に封鎖することは出来ないでしょうから…」
キールが必死で水にぬれた岩場を上っている中、リリーは壁に指を這わせて封鎖された隠し通路を探す。
 「キール様、こちらです」
海水で服を汚しながら崖に指を掛けると、リリーが早くも岩で塞いだ通路を見つけたらしく、金属製の棒で隙間をこじ開けていた。
そんなものでこじ開けられるのか疑問だったが、ようやく崖を上りきると、人一人が通り抜けられるほどのスペースが確立されていた。
「この通路から内部に潜入します。そうすればきっと、キール様のご期待に添えるかと」
しげしげと通路を眺めていたキールにそういうと、リリーは短く指笛を拭き、王国騎士たちにここにも通路があることを知らせた。
一組の騎士達がこちらに向かうことを確認したのち、リリーは通路に片足を突っ込む。
「では参りましょう」


さ、三周年目になってしまったああああ!!!
期末テストがようやく終わったので、これで更新に専念でき…るとおもいます…たぶん