複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ? 参照13200ありがとう御座います! ( No.574 )
- 日時: 2016/08/03 13:46
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: A1qYrOra)
カメルリング王国ルート 087
ラルス白騎士団長が突破口を作り出す中、傭兵部隊がさらなる浸食を使用と四方へ駆け出していく。
キリエも負けじとミセリコルデを振り回しながら、ツバキ団長の背中を追いかけて走る。
「団長、俺達は広いとこで戦いますんで!」
「あぁ…気を付けるように!」
ジョレスとノイアーと言う名前の、腕の立つ傭兵たちが身をひるがえして白いタイルの上を駆け抜けていく。
潮風に若干腐食された白いレンガ調のこの小道は、崖の見張り場所へと数人の騎士達が昇るために設計されただけのものだ。
どたどたと踏み荒らされて、美しい石灰色が、泥で茶色く沈んでしまっている。
騎士達が狭いとばかりにレンガが敷かれた通路の脇を通るせいで、退屈な見張り時間を紛らわすためにと植えられたのだろう、明るい色の植物がズタズタになって萎れてしまっている。
(フランチェスカ様は、こんな暴力的なことを望んでなど…)
分岐していく仲間たちの背中を見ると、心に暗い気持ちがこみ上げ、思わず十字を切ろうとしてしまい、あわてて握りしめた十字架を払いのけた。
しかし一瞬の思考にもかかわらず、多くの背中の中にツバキ団長を見失ってしまった。
しまった、と思いながら、あわててその姿を探そうと首を巡らせたとき。
短い絶叫と、地面に転がるような物音がして、キリエははっとをこわばらせる。
白いタイルが順当に続く明るい緑の多い茂る先で、誰かが苦痛の悲鳴を上げているらしい。
背の高いよく整えられた緑の隙間から、ぎらつく刃物がちらりとのぞく。
(誰かがやられている!)
いっそ、どこで戦おうとも同じだとキリエは庭先に飛び込み、迎え撃とうとミセリコルデを素早く構えた。
予想通り、迷路のように四角く刈り込まれた庭園では、あちらこちらで王国と帝国の騎士達が入り乱れて戦闘していた。
最初に目についたのは、なぜか足を血まみれにした王国の騎士達だった。脚を鋭い矢で射ぬかれたらしく、中には寝そべったまま果敢に帝国の騎士に応戦する者もいる。
キリエは身をひそめながら弓兵の居場所を特定しようとする者の、既に殺されたのだろうか、現在矢は一つも飛んできていない。
それを確認すると、キリエは首元に手を伸ばし、指に絡まる鎖を引きちぎった。
そして、白い十字架を一瞥すること無く投げ捨て、敵に突進した。
倒れた王国の騎士を救うために、振りかぶっている帝国の騎士に切りかかり、向けられた剣を弾き飛ばす。
たとえ重装備をしていたとしても、針のように鋭いミセリコルデの切っ先はその隙間を一突きし、一撃で絶命させる。
苦しませずに殺したことに関しては自信があったし、投げ捨てた十字架にたいしても、あれでよかったのだとなぜか満足感があった。
キリエの後を追って加勢に来た仲間たちが戦う中、敵を横目で警戒しながら、倒れた仲間に手をさしだす。
「大丈夫ですか?一端ラルス団長たちの元へ戻りましょう。もうじき魔導部隊の方々がやってくることですので、傷の手当てをしてもらいましょう」
肩を貸して助け起こすと、傭兵だろうその男は安心したように笑みを浮かべる。
「あぁ、助かったぜ。対して腕ふるっちゃいねぇのにここで退場だなんてなさけねぇもんな」
ホント、魔法使い様様だぜ、と笑う男に腕を貸しながら、この人を助けることでまた誰かが死ぬのだろうなどと無意識に考え、思わず苦笑してしまった。
「俺は自分でまだ動けるから、やつらにてぇかしてやってくれ」
その男がよろけながら言うので、キリエは血に染まる庭園を振り返り、まだ倒れている仲間たちを見つめた。
絶命している者もおり、キリエはそんな彼らにそっと会釈して、怪我人に近づいていく。
しかし、怪我人の一人の肩に腕を回している中、異様な血の跡がずるずると続いている事に気付き、思わず目でそのあとを追う。
その終点は生け垣の先であり、血にまみれた男の腕がのぞいていた。
死んでいるのかと思ったが、その指がゆっくりとだが生け垣を掴み、もう片方の腕が救いを求めるように宙に伸ばされていた。
「ッ!?」
しかし次の瞬間、何かに引きずられたかのように腕が見えなくなり、後には血のあとだけが残った。
「ここはまかせますっ」
仲間の騎士達に叫ぶと、キリエは慌てて戦いの中に舞い戻り、剣で相手をはじきながら、血のりの終点へ駆けつける。
しかし、そこにはもう誰もいず、男の指の血の跡が抵抗するかのように延々と続いているだけだった。
コッコさんこんにちは!!
気長に待ってくださって、本当にうれしいです!
私も三年も続くとは思ってなかったですねw
コメントありがとうございます!!!