複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ?【第2回オリキャラ募集】 ( No.63 )
日時: 2013/08/03 10:19
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: TM72TTmK)

005 ミカイロウィッチ帝国ルート


「い、いよいよですね…」
夕時が迫り、シュナイテッター伯爵とリン、エディその他もろもろが馬車に乗り込むと、馬車は帝王の住まう宮殿へと音を立てながら進む。
「商談についての手筈はいいだろうな?」とシュナイテッター伯爵が隣に座る秘書に話しかけ、いろいろと打ち合わせをしている。
父親にとって、皇女様が開く舞踏会だろうと商談の場なのだ。
エディは心の中でため息をついた。隣の緊張でうつむくリンを見ながら、ある人物を思い出す。
この馬車の中にいない、本来ならばいっしょに来る人。普通ならリンの座る場所に座っている人物。

思い出す記憶の中に、とても薄い印象で焼き付いているのはエディの病弱な母親。
エディを産んでから少しづつ体調を崩していき、エディが5歳くらいになると、ベットに寝たきりになっていた。
しがない商人の財産をすべてなげうっても、彼女の病気は治らない。エディの父はそれはそれは大変働いてお金を稼いでも、貴族や地位の高いものに比べると雀の涙程度だった。そんな雀の涙の金では医者は診察すらしてくれない。それほど重い病気だった。
そしてエディが8歳になったころ、母親は惜しくも亡き人になった。
お金がなかったから救えなかったと父親は嘆き、妻の忘れ形見のエディまで病気で失うわけにはいかないと、大金を欲し、ついには帝王に認められ伯爵の地位を与えられたのだ。
伯爵の地位になると大金が入り、エディは一般市民から伯爵のお嬢様に繰り上がったのだ。
だがエディの父、シュナイテッター伯爵はこの地位に満足せず、さらに何があっても大丈夫なようにと、さらなる大金を求めて金の亡者となってしまった。
金があればこの世の中は渡って行ける仕組みになっているんだ、と小さい頃から嫌になるほど聞かされた。
金があれば何でもできるし、金の量が幸せなのだと、父は言った。金がなかったから不幸になり、妻は死んだ。金があったら妻は死ななかった。金さえあれば人生は幸せになるのだ…それが父の考えだった。
(母さんが死んだのは悲しいけど、金の量が幸せだとは思わないよ父さん…)
ため息をつきながらエディは膝に両手を落とし、指を合わせる。
指輪がはまるその指は、きらびやかだが、エディは好きじゃなかった。
(こんな指輪が一つも買えなかった時期、貧乏だったころの方が、あたしは幸せだったのになぁ。父さんも母さんもあたしに構ってくれたし、お嬢様じゃなかったから自由だった。父さんがあたしを金儲けの手駒にすることもなかったし)

馬車がしばらくして停止し、リンが緊張した顔でエディの方へ顔を向けた。
エディは力なく微笑み、ついたね、と微笑んだ。


王国ルート帝国ルートは5ターンごとに交互に進行します
カードゲームっぽい設定だな