複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ?【第2回オリキャラ募集】 ( No.71 )
日時: 2013/08/03 16:53
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: TM72TTmK)

009 カメルリング王国ルート


「さて、まずは配達をしてから朝ごはんと行こうか」
戸締りを済ませたラグがやってくると、発明家家族はその館の前にたむろった。
貴族風の真青色の服のポケットから何十にも折りたたまれた一束の長い紙を取り出して、ミルフィーユが庭の機材の中から箱に包まれたものを拾い上げてラグに手渡す。
小さな木箱は外見からでは何が入っているか解らない。
「それ、配達物ですか?」
注文表を眺めているミルフィーユの代わりに、木箱を持ったラグがそうですよと答える。
「え、配達物って外に置いてるんですか?盗まれないんですか?」
ビックリしてルークがたずねるとラグの代わりにミルフィーユが答えた。
注文表をポケットに仕舞いこみ、歩き出しながら言う。
「完成品なんかに用は無いんでね。それに私の発明品を入れた箱は、間違った開け方をすると爆発するように作られてるから心配要らないよ」
「そっちのが心配ですよ?まぁ・・・いいですけど」
ルークは庭に山積みになった木箱たちに視線を送ると、歩き出したミルフィーユの後についていった。

間もなくして到着したのはシュタイン亭の傍の宿屋だった。
朝ごはんはシュタイン亭でとるのだろう、シュタイン亭から漏れ出すかぐわしい香りにルークの腹の虫が反応する。
「ここにいる人物に配達し終わるまでの辛抱ですよルーク様。僕も腹ペコですけど」
ラグの言葉に微笑んでいると、ミルフィーユは宿屋の扉を開けてずんずん入っていく。
『サイオンジ宿』という変わった名前の看板は、どこか異国を連想させる。あいにくルークにはそれが何処の言葉なのか見当もつかなかった。

「あぁ、おはようございますミルフィーユさん」
ミルフィーユについて宿屋の扉をくぐると、意外にも経営者は西洋人。異国風の欠片も無い男だった。
てっきりシュタイン亭のように、ここの主人か女将さんの名前をとったのだと思っていた。
サイオンジの由来をラグにたずねてみると、ラグはいとも簡単に答えた。
「ここの宿屋以前は経営者さんの苗字が付けられていたんです。でもある日強盗が現れて殺されそうになったときに、異国の女性が不思議な剣を抜いて救ってくれたそうなんですよ。その女性の苗字がサイオンジだったので、経営者さんは感謝を込めて改名したんですって」
へぇーとルークは目を丸くする。不思議な剣にもその異国の女性にも興味がわくが、それは半年ほど前の出来事で、その女性の行方はわかりそうもない。

「シェルレイドさん、呼んで貰えますかね?配達物があるんで」
ミルフィーユが営業者に頼むと、落ち着いた声が階段から降りてくる音と共に降って来る。
「配達物、できたんですねミルフィーユさん」
質素な宿屋の階段を下りてきたその人物は、目深まで黒いフードを下ろし、華奢な身体を覆いつくすマントを着用していた。
時折マントの裾がひるがえり、茶色の分厚い服が見え隠れする。
と、ぱさっと彼女がフードを剥いだ為、その印象的な赤い髪があらわになった。
口を開けたまま彼女を見ていたルークの前で、ミルフィーユが箱を彼女に差し出す。
「リリー、ほら配達物。お代は・・・そうだな、何がある?」
リリーと呼ばれる赤毛の少女は箱を受け取ると、ポケットを探り、美しい首飾りをミルフィーユの手のひらに落とした。
「三日前に暗殺してきたときに、回収したものです。あなたの望む素材とやらは私には良くわからないので」
かなり物騒なワードをさらりと言ったリリーは、ミルフィーユに箱の錠を開いてもらうと、うれしそうに中身をとりだした。
手のひらでもてあそんでいる人のこぶし大の灰色の機械。
「毒煙は結構重宝しますからね、ありがとうございます」
毒煙を噴出する爆弾を彼女は注文したらしい。
お辞儀したりリーに、ミルフィーユはルークの手を引いて彼女の前に立たせると言った。
「リリー、転職を考えている少年がいてね。私の弟子ルークなんだが、暗殺の仕事について話をしてやってくれないか?」