複雑・ファジー小説

Re: さぁ 正義はどっち ?【第2回オリキャラ募集】 ( No.83 )
日時: 2013/08/04 17:48
名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: TM72TTmK)

007 ミカイロウィッチ帝国ルート


「・・・あたし少し疲れてしまったので、ちょっと休憩しますね」
にっこりと完璧な作り笑いをしたエディは、ワルツの踊り相手に言ってからダンスホールから退いた。
舞踏会が始まってからすでに二時間が経過し、二時間ぶっ続けでエディは沢山の人と踊った。
(あれだけ貴族と踊れば父さんも満足するでしょ)
やれやれ伯爵の娘は楽じゃないとエディがリンの元へ帰ろうとしたとき、ふと目を見張る一団が見えた。
黒髪に紅色のバンダナを無造作に巻きつけた男と、小さな金髪のゴシックロリータ服に身を包んだ女の子が、大きな的を運びながら、なにやら言い合っているのが見える。
よくよく耳を澄ますと、会話の内容が聞こえた。

「アタシにこんな重い物もたせるの?!か弱い女の子に良くそんな仕打ち出来るわね!」
「か弱い女の子っておまえ・・・年齢三桁だろうが!俺より年上の癖して気のいい青少年を良いように使うんじゃねぇ!」
バンダナの男が少女に言い返すと、少女は片手に持っていたピンク色の杖で男のわき腹をぶん殴る。
ゴテゴテに飾り付けられているピンクの杖は殴られると結構痛いものらしく、バンダナの男は的を抱えながら痛そうにうずくまった。
うずくまった体位から、忌々しそうに少女を涙目でにらむ。
「おま、手下の癖に、団長の俺に・・・攻撃すんな」
だが少女は腰に手を当てて勝ち誇ったように笑った。
「手下ってねぇ、好きでアンタの部隊に所属したわけじゃないのよ!」

「・・・」
エディはその様子を不思議な面持ちで眺めていたが、シュパンッとムチの音がして慌てて玉座の方へ振り返った。
音楽までが止み、人々の注目は玉座の皇女に注がれた。
真っ赤な玉座の彼女は、ゆっくりホールの中心までやってくると、ムチを片手に微笑みながら言った。
「そろそろ面白いことをしましょ!」いって再び合図するようにムチを打ち鳴らすと、さっきのバンダナ青少年とゴスロリ少女が的をいくつか運んできた。
そしてさまざまな大きさの弓と矢を皇女に手渡す。
「ありがと」と皇女は二人にお礼を言うと、その弓矢を掲げて大声で言った。
「誰か的当てをしてくれないかしら?私今弓矢のうまい人が好きなのよ。この会場の端から端にある的に5本すべて中心に射当てたら、ご褒美を与えちゃうわよ!」
シーンと一瞬静まり返った後、前に出るものはまだいない。
ここに居る人々はほとんど貴族で、弓矢などせずに優雅に暮らしている。そもそも弓矢は階級の低いものが扱う武器なので、貴族は剣ならともかくそれに触れたことが無い者がほとんどだった。
それに、前に出たとして的を一つでもはずしてしまったら、皇女のムチの餌食になるかもしれない。
よって誰も前に出ない。

「・・・誰もいないっていうの?誰も私を満足させてくれないの・・・?」
しばらくして笑みを浮かべていた皇女の顔から、すうっと機嫌の良い笑みが消えていく。
今は冷たい空色の目が、期待に沿わない人々を殺気立った目で見つめている。
そんな皇女を恐ろしいものでも見るように見つめていたエディの肩を、ぽんと誰かが叩いた。
振り返る前に、耳打ちされた。
「エドウィン、おまえ弓矢得意だったな」背後に立つのはいつの間にか商談から帰ってきた父の声。
「皇女様に気に入られるためだ、これはチャンスだぞ」
イヤだと拒否する前に、父親はエディの肩を強く前に押し出した。
押されてエディは一人、人気の無いダンスホールの中心へつんのめりながら出てしまった。

恐る恐る体勢を正したエディが皇女のほうを見ると、シェリルは獲物を目の前にしたような微笑で、弓矢を差し出した。


やっぱりヴィトリアル君とアーリィちゃんを絡ませるの楽しいw