複雑・ファジー小説
- Re: さぁ 正義はどっち ?【第2回オリキャラ募集】 ( No.90 )
- 日時: 2013/08/04 18:27
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: TM72TTmK)
008 ミカイロウィッチ帝国ルート
後戻りはもう出来ないと諦め、エディは深呼吸しながら弓矢を受け取った。矢筒には五本きっちり、矢が入っている。
一矢でも逃したら後は無いのだ。
「がんばって私を楽しませてね」ニコニコ笑いながらシェリル皇女が言い、部屋の隅に移動するよう促した。
エディは会場中が静まり返る中、一人靴音を響かせて的から一直線上に一番離れた反対側の壁際まで来ると、再び深呼吸した。
皇女は玉座の前に仁王立ちし、バンダナの青少年とゴスロリ少女はその脇に控えている。
エディは矢を放つ前に父親のことを見てみた。
沢山のギャラリーは押し黙り、皆哀れむようにこちらを見つめていた。
その中で父親は、不思議なほど無表情で皇女を見つめている。娘が矢を放つ瞬間より、皇女の好感度の意向を見たいらしい。現在シェリルは、エディの出現で機嫌が良かった。
滑らかな弦に手を伸ばし、背中の矢筒から一本目の矢を取り出す。
エディは良くしなる弦に微笑み、ためらうことなく一投目を放った。
鋭い風きり音が会場の端から端まで一気に通り抜け、小気味良い音と共に的に突き刺さる。
はずすことは免れたようだが、皇女の求めるのは的の中心に当てるスキル。少しでもはずしていたら駄目なのだ。
しばらくしておぉっと声が上がる。的に一番近い貴族が一人、狂ったように興奮して叫んだ。
「真ん中だ!すごいぞ!見てくれ、ほら!」
他の貴族達も身を乗り出し、野次馬の如く首を伸ばせるだけ伸ばしている。
エディはふっと息を吐き、目を閉じた。
まだ集中力を途切れさせるわけには行かない。腕に自身はある、あとは精神力の勝負だ。
人が引いてから、エディは二投目三投目四投目を続けざまに放ち、すべて的の中心につきたてた。
最後の一投目をを迎えると、押し黙っていた会場が熱気に包まれる。
再び深呼吸して、エディは緊張を抑え、矢を撃った・・・が、奇妙な弾力と共に弦が真っ二つに割れ、矢が陸に引き上げられた魚のように空中で踊った。
「っ・・・!」
エディが息を呑んで目を見開く中、ことんと矢が床に落下した。
熱狂していた貴族は絶句して、そろって皇女の顔をうかがった。
弦が折れたことは事故だ。もう一度やり直させるのか、それとも機嫌を損ねてムチをふるうのか。
「・・・そこのあなた、こちらへ来なさい」
玉座の前に仁王立ちしていた皇女は、冷たい表情のままムチでエディのことを指し示す。
(うそ、やり直しさせてくれないの・・・?)
蒼白になったエディは思わず父親の顔を見たが、父はエディと顔を合わせようとしない。
リンが遠くの方から悲痛そうな顔でこちらを見ているのが見えた。誰も止めようが無い。
エディは割れた弦と落ちた矢を拾い、青ざめつつ皇女の待ち構える赤い玉座へと進み出た。