複雑・ファジー小説

Re: 俺だけゾンビにならないんだが ( No.13 )
日時: 2013/08/06 23:32
名前: 沈井夜明 ◆ZaPThvelKA (ID: 7NLSkyti)

食べ物の棚から離れた所にある、医療品や化粧品などが並べられているコーナーに向かう。
 病気にならないとも限らないし、そういう時の為に薬が必要だ。薬コーナーから、風邪薬や胃薬、抗生物質など、目についた薬の箱をもう一つのカゴに入れていく。後、傷なんかに付ける為の軟膏や消毒液、包帯やテーピングなどもひと通り入れていく。何が起きるか分からないから、何でもあって困る物は無いだろう。目薬や鼻詰まりの点鼻薬なんかも、良さそうなのを入れておく。薬品は箱が小さいから、沢山入れることが出来る。
 物を取る時に音を立てないように注意して、周囲を警戒する事も勿論怠らない。やはりゾンビは音にしか反応していない。俺の臭いには反応していないからな。
 
「これは……」

 奥の方に合った、ピンク色の棚。『大人の棚』なんて書かれたコーナーの前を通り掛かり、俺は少し動きを止めた。
 そこにはコンドー○やオ○ホ、ローションなどが並んでいた。
 店長おすすめ、なんて書かれたコンドー○を手に取り、俺はゴクリと息を呑む。いや、あの、俺使ったこと無いしね、はは。俺、童貞っす。後、ゾンビ……では無いっす。
 まあ何が役に立つか分からないからな。それらもひと通りカゴの中に入れておく。それにしても、よく掲示板とかで話題になっているのを見るけど、お、オ○ホってどんなんだろう……。童貞の俺には想像もつかねえや……。
 と、場違いな事を考えながらも、警戒は怠らない。
 
「……!」

 途中、サプリメントのコーナーを発見した。これは食料が全部無くなった時とかに役立ちそうだな。
 一つ袋千円近くするサプリを、色々な種類カゴに入れる。カプセル状になっているお陰で沢山詰め込む事が出来る。それから、隣にあったカロリーメイトなんかも詰めておく。
 プロテインなんてのも見つけた。確かこれはタンパク質だったかな。いずれ、貴重な栄養源になるだろう。
 プロテインは巨大な缶に入っている奴と、袋に入っているのが合ったので、袋の方を選択しておく。流石にこの大きさはカゴに入り切らない。ホエイプロテイン、ソイプロテイン、アミノプロテイン、と色々な種類が合ったが、どれが良いのか分からないので適当に手当たり次第入れておく。

 よし、こんなもんか。

 静かに店内の中を移動し、入り口へ向かう。途中で見つけたチョコレートなどといったお菓子や、サラミやスルメ、チーズなどといったツマミ系の食べ物もカゴに入れる。
 こうして、俺は薬局で食料や医療品その他もろもろを入手し、外へ出た。

「うわ」

 自転車のすぐ近くを一匹のゾンビが彷徨いていた。さっき店内で見た制服を着ていることから、この薬局の店員だろう。
 音を立てないように自転車に近づくが、どうしても鍵を開ける時には音がなってしまう。ポケットに入れておいた鍵を確認し、俺は賭けに出る。
 カゴを自転車のすぐ近くに置き、気付かれないようにゆっくりとゾンビの背後へ向かう。

「っらぁ!」

 響きすぎない程度に声を出し、俺は思い切ってゾンビの背中に蹴りを入れた。軽めで。
 無防備な背中に蹴りを入れられたゾンビは、背中を大きく反らして勢い良く地面に転がり込んだ。その勢いは軽めで蹴ったのにも関わらず、飛び蹴りでもされたの如く激しい。
 ……何となく予想は付いていたが、どうやら俺は筋力? が強くなっている様だ。噛まれた影響だろうか……。まあ多分そうだろうな。
 自分の身体を分析しながらも、俺はポケットから鍵を取り出し、即効で自転車の鍵を解除する。そして置いてあったカゴの一つを自転車のカゴの上に乗せる。サイズ的に自転車のカゴには収まらないが、乗っているので良しとしよう。そしてもう一つを左手に持ち、俺は右手だけでハンドルを握る。最悪の場合は片方を捨てなければならないが……まあ仕方ないだろう。
 ゾンビが起き上がるよりも早く、俺は自転車を漕ぎ始めた。
 次はホームセンターだ。
 と言いたい所だが、この様子じゃとてもじゃないけど他に荷物を持てそうに無い。
 確か家に金属バットとか武器になりそうな物も合ったし、何も持ってこなくてもいいかなあ……。