複雑・ファジー小説

Re: 星憑のエルヒューガ ( No.19 )
日時: 2014/07/30 20:00
名前: 夕暮れメランコリー (ID: G35/fKjn)

「りょーかいりょーかい」
 ジョバンニはそう言って運転席へ乗り込んだ。
「おいヨダカ、出発するぞ」
「あっ、はい」
 既に乗り込んでいたシグナルとシグナレスを追って、僕も銀河鉄道に乗り込んだ。


 汽車に乗るのは初めてだが、この汽車の内装が変わっているのかと問われれば、多分さほどでもない。非常にスタンダードな汽車の内装だ。
「五分ぶりだなーヨダカっ!」
「うわっ」
 シグナルさんたちの向かいに座ろうか、それとも別の座席に座った方がいいかと迷っていると突然後ろから抱きつかれた。犯人はジョバンニしかいない。多分。
「……あの、運転は」
「そんなのだいじょーぶだいじょーぶ!知ってるか、この列車自動運転っていうめっちゃ便利な機能つきなんだぜ!だから俺がサボってても全然おっけーって訳」
 どう?すごいでしょ?と自慢してくるジョバンニだけれども、凄いのはジョバンニじゃあなくてその運転システムだ。
 それにしても星憑本部は相当科学技術が進んでいるんだなぁと実感した。「箱庭」が進んでいないだけというのも一部あるけれど、それでも十分他の国に引けを取らない技術ばかりだ。シグナレスの乗っていた空を飛ぶ機械もその一つ。空が飛べるだけでも僕にとってはありえない。
 エーテルやさっきの駅のホームみたいなものは科学技術と切り離そう、うん。
「ところで!ヨダカも星憑なんだろ?何の星憑なんだ?」
「えっと、僕は—————」
 そうだった。
 何のホシビトか教えられていないから、僕自身が何の星憑かわかっていないんだった。
 ジョバンニは凄く興味深々といった顔で見つめてくるし……どうしよう。上手くこの場を切り抜ける嘘なんて思いつかないし思いつけないし、思いついた所で上手に嘘なんてつけない。
「じょ、ジョバンニは……?」
「俺?俺はねー、南十字!」
 予想外の星座。もっと他の————例えば蟹座とか蠍座とか、そんなメジャーなものを想像していたけれど。
 ホシビトはまさしく『星座の数だけ』いるようだ。
「あっでもねー、出来れば「みなみじゅうじ」じゃなくて「サウザンクロス」って呼んで欲しいかな!そっちの方が格好いいから!」
「努力するよ」
 さて。




 ————で、僕は何座の星憑なのさ。
 ————教えなきゃ駄目?本当に?
 ————うん。知っていないとこれから色々苦労しそうだし。
 ————別にさー、本部に着けばわかるんだし今知ろうとしなくてもいいんじゃない?




 この僕のホシビトの性格をどうにかして頂きたいんですが。何故こんなにもひねくれているのだろうか。
「ん?ヨダカどうした?」
「別に何も……」
 ほら、苦笑いしか返せない。