複雑・ファジー小説
- Re: 星憑のエルヒューガ ( No.21 )
- 日時: 2014/11/02 20:24
- 名前: 夕暮れメランコリー (ID: G35/fKjn)
一言で言えば、綺麗だった。
ゴミはおろか塵一つ落ちていないエントランス。
床は恐らく大理石の類だろうが、見たことのない輝きを放っている上に、藍色とも青色ともとれない色をしているので一概に“大理石”と言い切れない。
周りで談笑しているのは恐らく僕と同じく星憑となった人たち。但し僕より先輩だが。
その綺麗な本部に一歩、足を踏み入れる。
「おっかえりー、シグナルとシグナレス」
ちりんちりん。
不意に、声と鈴のような音が頭上から聞こえてきたので、僕は名前を呼ばれていないけれど上を向いた。声はどうやらエントランスの二階から聞こえてきたようだ。
「あーっクラムボン!てめー任務サボりやがったな!?ふっざけんじゃねーよお陰でこっちは苦労したんだからな!?」
「何の事?僕分からないなー」
くせっ毛な茶髪で、なぜだか片手で持てるタイプの琴を所持している、僕よりかは絶対に年下な少年がそこにはいた。
右腕に『ジョウホウタンマツ』と思われる星型の飾りが付いた腕輪をしているし、シグナレス達と親しい仲のようなので十中八九星憑だ。そもそもこの本部にいる時点で星憑だけど。
「で、そこの人は新人サン?もう噂になってるよ、新人が来るって」
「え」
確かにホシビトと新規契約した人がいればすぐに分かるようになっている、とは聞いていたけれどこんなに早く知られるとは。思わぬ歓迎に戸惑う僕だったけれど、クラムボンと呼ばれた少年はその僕の反応に大変満足したようで、二階から一階に飛び降りてきた。
「やーそれにしてもねー、まさか『あの星座』の星憑サンが男とは……人生って分からないものだねー」
「……『あの星座』?」
含みを込めたクラムボンの言い方からして、どうやら彼は僕の契約したホシビトが分かっているようだ。
「そ、『あの星座』。まぁ君ならいけそうだけど」
きしし、ともにしし、ともつかない、強いて言うなら『かぷかぷ』あたりが打倒と思われる笑い声をあげてクラムボンはエントランスの奥に消えていく。
しかし五歩ほど歩いた所でくるっとこちらに向き直ってこんな事をシグナレス宛に言った。
「そうそうシグナレス、ホモイが呼んでたよ」
ホモイ。
その単語(恐らく名前)が出た瞬間シグナレスは闘志を露にした。どうやらシグナレスにとって因縁の相手なようだ。
「よっしゃあのホモイめ、今度こそぎったぎたのけっちょんけっちょんのぐっちゃぐちゃのぼっこぼこにしてギャフンと言わせてやるぜギャフンと!」
今にでも弓を取り出そうとするシグナレスを「ここ本部だから」と取り押さえるシグナルさん。暴走しがちなシグナレスと、そのブレーキ役のシグナルさん。この兄弟のパワーバランスがだんだん見えてきた。