複雑・ファジー小説
- Re: 星憑のエルヒューガ ( No.6 )
- 日時: 2013/08/12 19:47
- 名前: 夕暮れメランコリー (ID: hMEf4cCY)
何が起きたのか理解出来ないし、理解したくない僕は咄嗟に近くの路地裏へと逃げた。
……また逃げてるじゃん。情けない。
しかしながらこれは逃げて正解かもしれないな、と思ったのは、“何か”が暴れ初めてからだった。
何かは、見た目こそ沼から這い出てきたかのような、泥色のヌメヌメしていそうな(それこそ泥のような)液体をまとっている。大きさはだいたい3メートルくらいで、結構デカい。
だからこそ、暴れた時はもう大損害だ。
先ずは不運な事に、何かの近くに店を構えていた八百屋が被害にあった。
にゅ、と何かの3メートル程の巨大から触手のようなものが出てきたと思うと、それで八百屋をピンポイントで壊し始めた。八百屋はあっと言う間に木材をのぞかせ、もう八百屋があったのかどうかさえわからなくなってしまった。
「ひっ………………!」
僕は路地裏からそれを見ていたが、八百屋の主人などがどうなったかなど知りたくない。見たくもない。しかし家を一叩きで壊滅状態においやるのだ。人間などきっとミンチになってしまっている。内臓撒き散らし、脳みその破片があちこちに跳んでいて、きっと人間は潰れたトマトの如くぐっちゃぐちゃだ。嗚呼想像しただけで吐き気がしてしまう。現に昼食べたオムライスが喉元まで出かけていたので、口を押さえてぐっと飲み込む。気持ち悪。
飲み込んだところで、何処からかカチカチと鳴っていることに気付く。
カチカチカチ。
カチカチカチカチカチ。
規則的に鳴っているそれが、自分の口から鳴っていることにようやく気付いた頃には、もう商店街は壊滅的状況になっていた。
「はは……卵は無理かな……」
恐怖心により鳥肌まで立ってきたじゃないか。どうしてくれようこの心。
恐怖心に支配されたせいでもう、僕は正面を向けなくなってしまった。なるべく体を丸めて、無駄だろうけど何かに気付かれないように。
だから僕は、アイツがああなった瞬間を見ることが出来なかった。