複雑・ファジー小説
- Re: 「人間」を名乗った怪物の話。 ( No.91 )
- 日時: 2013/08/27 16:20
- 名前: アルビ ◆kCyuLGo0Xs (ID: A/2FXMdY)
1-9.
それから俺たち一行は、リストに書かれた物を着々を集めていき、夕方になるころには残りはあと一つとなった。
「で、なんて書いてあるの?最後のヤツは」
モードが尋ねてきた。
そういえば、たまたまアンヌからリストを受け取ったのが俺だったがために、なぜか『次の指示を出す役』が俺になっていた。まぁ、誰が務めてもそんな変わらないだろうからどうでもいいが。
「次は……『月光石』だとさ。ってなんだこれ」
俺が疑問に思っていると、ティムの手を勝手につないでいるナルシーが説明した。
「灯台に置いてあるまじない用の特別な石ですよ!月の光を毎晩浴びていて、それのおかげで石に宿った神の力で海を静かにする石なのです!」
「そんなのがあるのか。……月の光を浴びた、って、その程度で海が静かになるのかよ?」
「ニコル、それ言ったら夢もへったくれもないわよ」
「あくまで、『おまじない』」
モードとティアが反論してきたので、俺はそういうものかと無理やり納得した。
「あのぉ、でもおまじない道具でも、そんな大事な石をとっちゃって大丈夫なのかな?信仰深いヒトには困ると思うんだけど」
ティムがそう言ってきた。
「さすが私の天使ティムさん!あらゆる宗教の方にも配慮を怠らないなんt」
「ちょっと砕いてカケラだけもらえばいいんじゃねぇの?」
ナルシーの言葉を遮って俺が言うと、「そっか〜……」とひとまずティムは納得した。
-*-*-*-
それから俺たちはまた場所を移動し、この街の港にきた。
この国では月光石の信仰が割と根付いているらしく、灯台には必ず月光石が置いてあるらしい。
「ここが灯台です!月光石は、この最上階に置いてありますね」
といってナルシーが示した灯台は、結構な高さがあった。
もう辺りもだいぶ暗くなってきたし、早く済ませたい。
ここは全員でぞろぞろ行くより、一人でさっさととってきた方が効率がいいだろう。
「じゃ、俺とってくるからお前らここで待ってて」
「え、ちょっとニコル!?あんた一人で、って疲れないの?」
なぜか心配された。
「お前な、俺の本業忘れたのかよ?20年間旅人営業の体力なめんな」
それだけ言って、俺はさっさと灯台を上り始めた。
-*-*-*-
これか……?
最上階で、なんだか小さな部屋に出た。
その部屋は、たぶん展望台なのだが……中央に、白い皿に入れられたいくつかの小石が見つかった。
ちょうど窓から月光が差して、その皿の中の石全体に光が当たるらしい。
(なんだ、月光石って複数個だったのか。ティムの心配はとくに問題なかったな)
個数も規則的に決まっているわけではなさそうで、ただ無造作に山積みにされている。俺はそのうちの、妥当そうな1つを手に取ってポケットにしまった。
これで帰るか……。なんだか今日は一日、アンヌとだいぶ離れていた。
…………。
(……。って、俺、今何考えてた!?)
一人旅に慣れきっていたはずが……1日離れていた程度で何黄昏ているんだ、俺?
いや、俺は少女趣味はなかったはずだ(真顔)。
「なんだかなぁ……」
俺は独りごちた。
あんまり人となれ合うのは望んでいなかったんだが……。
だって、いつかどうせ、アイツもいなくなるのだろうから。
——いつか、『誰か』が言った、『そんなことないと思うけど?』というセリフも結局嘘になったのだから。
もう、顔も名前も憶えていない奴。誰だったかな……。
なんて思いにふけっていた時だった。
「……コル……ニコル!!!」
小さく——遠くで、モードの悲鳴のような声が聞こえた。
「ん、なんだ?」
窓から皆がいるであろう場所を見てみた。
そして、俺の唯一見える方である右目に飛び込んできたのは、
——黒ずくめの集団に、全員が襲われているところだった。