複雑・ファジー小説

Re: 必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話 ( No.4 )
日時: 2013/11/22 20:56
名前: 琴 ◆ExGQrDul2E (ID: Fa9NiHx5)

第一話 <スマートフォン>

  俺は、赤崎 真人。丸菜高校一年生。平凡極まりない男子だ。
 毎日、アンニュイな日々を過ごせるのは、ある意味平凡な俺の特権だろう。
 しかし、ある日、俺は突然スマートフォンをもらった。
母と父からのプレゼントだった。
なんでかはわからない。 突然貰ったのだ。
 
それは、昨日の夜の話だった。
「真人ー、 今日はいいものをあげるわよ!」
 その日の母はなぜか異常な程に上機嫌だった。
 しかし、成績もいつも通り普通に85点だった。特別に褒められることもない。表彰されるようなこともなかった。
 俺は首をかしげながら、母の前に立つ。
「なに? 母さん」
「じゃじゃーん!」
 無駄に大きな声で効果音を発した後、母が取り出したのは、今話題になっている「スマートフォン」だった。
「え、なんで?」
 嬉しいのは嬉しいが、なぜもらうのか分からなければ、素直に喜べはしない。
「なんでもなにも、 父さんが買えっていったのよ。 だから、プレゼントよっ」
俺に、スマートフォンの入った箱を押し付けてくる。
 なんなんだよ、俺の両親。意味わかんねぇ。
とりあえず、落としたら多分大変なことになるから、箱を 受け取り、机の上で箱を開けた。
 母は、俺の隣で感想でも待っているのかにこにこしていた。
 箱の中に入っていたのは……黒いスマートフォン。
かっこ良かった。そこまでは良かったのだが、俺は疑問に思ったことがあり、母に聞いた。
「なぁ、これなに?」
 なんと、スマートフォンの背中の部分に赤い字で「MAKOTO」と書かれてあったのだ。
「あぁ、それね。 父さんがわざわざ特注してくれたのよ」
 意味わからねぇ! てか、別に、特注しなくていいんだけど? 恥ずかしくて、こんなスマートフォン、学校に持っていけないし。

Re: 必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話 ( No.5 )
日時: 2013/10/24 21:24
名前: 琴 ◆ExGQrDul2E (ID: iuj9z/RI)

「え、あ、まぁ。 ありがとう、母さん」
 正直な感想をいったら、母が寝込みそうなので、一応お礼をいっておく。
 すると、母は尚更ハイテンションで、
「いいのよ、いいのよ! 礼は父さんにいいなさい!」
と俺の背中をばしばし叩く。母さんの黒い長い髪が揺れている。
 そうだな、たまには父さんの帰りでも待つか。
いつもなら、11時だから寝たいところだが、今日くらい待とうじゃないか。
 俺は、自分の黒い髪をいじりながら、父を待っていた。
しばらくして、机の上にある、母の鏡を使って、いじった髪を直す。
 僕は、母さんに似ているらしい。確かに、鏡をみると自分でもそう思う。母さんと同じ黒い髪に、黒い澄んだ目。 自分でいうのもあれだが、整った鼻筋。
 だけど、僕は学校へはいかない。学校へいくのは嫌だ。親の思い通り、大人の思い通りにはなりたくないのだ。
母さんは、まぁ優しいから俺は反抗したくない気持ちもある。だけど、問題は父だ。父は、俗にいう金持ちだ。それに、わがままという特典付き。最悪なのだ。
「ただいま」
 低い声が玄関から聞こえた。父が帰ってきたらしい。
俺は、玄関に向かって、
「おかえりー」
と、適当に返事を返す。と、横で母も、「おかえりなさい」と返事を返している。
「お、なんで真人も起きているんだ?」
「もぅー、とぼけちゃって! 真人がお礼をいいたいのよっ」
 母さんは嬉しそうに父に言う。だが、父の表情は堅いままだ。しかめっ面のままで、
「そんなもの、明日いえばいいだろう」
といったのだ。 流石の母も表情が曇る。

Re: 必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話 ( No.6 )
日時: 2013/10/24 21:03
名前: 琴 ◆ExGQrDul2E (ID: iuj9z/RI)

(なんだよ、それ。 わざわざ待っていたのに)
 俺は、そう思いながら時計をみる。針は、12時を指していた。1時間なんて、早いものだ。
「そんなこといっても、待ってたのよ。真人は」
 母の弱々しい抗議。父はそれを無視して、部屋へと入っていく。机に置いてある母の作った料理も無視して。
 その後、暗い母に言われ俺はスマートフォンをもって自分の部屋に帰った。
俺の家、こんな家庭で大丈夫なんだろうか。

 というわけだ。突然のスマートフォンの登場だった。あまり嬉しくはなかったけれど。
「真人ー、起きなさい」
 下の部屋から母の声。 昨日ほど暗くはないが、明るくはなかった。
俺は、「はーい」と返事をしてから、制服に着替えて下の部屋におりていく。
「おはよう」
 俺が言うと、母も父も「おはよう」と返してくれた。
あまり酷いことにはなっていないようだ。
 俺は、さっさと朝ご飯を食べる。
今日は、目玉焼きとサラダ。それにご飯。いつも通りのメニューだった。
 母さんは、機嫌が悪い時には朝ご飯はパン一つになる。そして、父と大声の喧嘩になる。だが、そんなことはなかったから二人ともあまり怒ってはないみたいだ。良かった。
「ご馳走様でした」
 俺は、食べ終わると、重い空気から抜け出すように、洗面所へ。そして、冷たい水で顔を洗う。やはり、冷たい水は気持ちがいい。
 その後、部屋に戻りバッグを持つと、「いってきます」といって返事も聞かずに家をでた。

……さぁ、今からどこへいこうか。

 学校だって? さっきもいったとおり、俺は学校へはいかないんだ。 だから、いつも制服でぶらぶらしている。
前は、隣町で一日中ゲームセンターにいた。かなり所持金は減ったけれど。
 でも、今日はどこにもいかなくていいかもしれない。なぜなら、このスマートフォンがあるから。

【第一話 END】