複雑・ファジー小説
- Re: 必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話 ( No.46 )
- 日時: 2013/10/25 15:03
- 名前: 琴 ◆ExGQrDul2E (ID: Z6QTFmvl)
「……はぁ」
席替えが終わると、退屈な授業が始まる。
俺は、盛大な溜息を吐いた。
(ほんと、めんどくさい)
なんで、授業なんて受けなければいけないのだろう。
いつも疑問に思うが、仕方ない。
意味もなく、退屈な授業を受けるのが義務なのだろう。その証拠に、周りは、真剣に授業を受けている。
柊さんも真剣だ。 クマのマスコットが付いたシャーペンを忙しなく動かしている。
クマのマスコットがついているから、みるからに使いにくそうだが、女ってのはそういうのが好きらしい。
周りの女は、大抵そんなシャーペンを使っている。
本当、意味がわからない。
だけど、いくら退屈だからって消しゴムを投げ合ってる男たちの方がもっと意味がわからない。
「赤崎さん、この問題分かりますか?」
その時、突然の声。
梢さんが俺に質問したらしい。俺は、咄嗟に問題をみた。
「わからねぇ」
呟く。 わかるわけないだろ、高校の勉強とか。
(最低中学レベルじゃねぇと、俺にはわからねぇよ。バカにしてんのか)
そんな気持ちも込めて、梢さんを睨みつけた。
「そうですか……では、柊さん」
梢さんは、俺の視線から逃げるように目を逸らすと、柊さんを当てた。
すると、柊さんはすらすらと答えを述べた。
(なんで、こんな問題が解けるんだよ)
柊さんの横顔をみる。真剣だ。
その下にいるにっこり笑顔のクマのマスコットが俺をあざ笑ってるみたいで、無性に腹が立った。
しかし、柊さんの横顔は、今まで通り綺麗だった。
しばらくして、退屈な時間も終わり、下校時間がやってくる。俺は、鞄を持って、多分誰よりも早く下駄箱に駆け込むと、靴を替えて外に出る。
そして、俺はスマートフォンを取り出した。
勿論、ゲームをするためだ。
その時、後ろから声がした。
「赤崎くん…… 、一緒に帰ろ?」
それは、柊さんの声だった。
どうしたんだろう? 今まで、……俺の記憶がある限りでは一緒に帰ったことなんてなかったのに。
俺は、心の中では首をかしげながらも、振り返るとニコッと微笑み頷いた。
すると、柊さんも安心したようにニコッと微笑んだ。
- Re: 必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話 ( No.47 )
- 日時: 2013/10/25 15:05
- 名前: 琴 ◆ExGQrDul2E (ID: Z6QTFmvl)
柊さんが俺の横に駆けてくる。柊さんは、本当に美少女だと思う。でも、俺は知ってる。こいつが、俺以外の奴とは喋らない、と言うことを。
こいつは、いつも一人だ。一人で、いつも俯いて本を読んでいた。女子はもちろん、男子も話しかけない。教室で、一人ぼっちなのだ、柊さんは。
「どっか、寄ってく?」
俺がそう聞くと、柊さんは控えめに頷いた。
「……うん」
柊さんもオッケーしてくれたので、俺は近くの喫茶店にはいることにした。
これでも、オシャレな喫茶店を選んだつもり。
店の名前は『Almond』という。少し古めの看板に、白い文字で描かれていた。
「へぇ……お洒落なお店だね」
柊さんが微笑む。
店の中に入ってみると、ほのかな木の匂いが広がっていた。木製のテーブルとイス。この時代になって、まだ木製だからかなり珍しい喫茶店だ。
奥の方に、女の人らしい姿を見つけた。なにかの作業をしているのかもしれない。その手には白いノートが握られていた。
「あの……」
俺が話しかけようと声を出すと、直ぐに彼女は振り向いた。白いノートをささっと引き出しに片付けていた。
「あらっ、お客さま、ご注文ですか?」
そしてそう聞くと、俺らの方へ足早に歩いてくる。
「はい。 この店のオススメはなんですか」
俺が微笑みながらこう聞くと、あちらは、
「そーですね……ここは基本的にコーヒーなんですけど、あなたたちは高校生でしょ?」
と返してきた。
(え、なんで高校生って分かったんだ!?)
一瞬、俺は戸惑ったが、しばらくしてその理由に気づく。
丸菜学園の制服だ。丸菜学園は高校だからすぐにわかるのだ。
男の俺の制服はともかく、女の制服はわかりやすい。
白が主の半袖のセーラー服で、リボンの色は青い。
スカートは青くて、膝くらいの丈が基本だ。
ちなみに、男の制服は白いシャツに黒茶色のズボンとベルト。……どこにでもありそうだ。
本当は、男の制服は赤いネクタイをしているのだが、俺はつけていない。ネクタイつけたら、息が苦しくなるからだ。
昔、父さんにその話をしてみたら、
「お前は、キツくしめすぎてるんじゃないか?」
と笑われたことがある。
それがなんか悲しく、トラウマになったから、もうネクタイを着けるのはあれ以来やめている。
「はい……高校生です」
俺が昔を思い出しているうちに、柊さんが答えてくれた。
「やっぱり? でもなー、うちはあんまり高校生はこないからなー、どーしよっか」
Tシャツにズボンという簡単な格好をした相手は悩んでいるのか右手を顎に当てている。
(丸菜学園にわりと近いのに、なんで高校生が来ないのだろう?)
- Re: 必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話 ( No.48 )
- 日時: 2013/10/25 15:07
- 名前: 琴 ◆ExGQrDul2E (ID: Z6QTFmvl)
「あ、そういえば昔きてくれた子がメロンソーダのんでたなー。 それでいい?」
相手がきいてくる。
俺はなんでも良かったし、柊さんもいいみたいだから、
「それでお願いします」
と頷いた。
「了解! じゃあ、待っててね。 いれてくるから」
相手は、俺に「適当に席に座ってて」と笑顔でいうと、奥の方に入っていった。
とりあえず、俺と柊さんで席に座る。
そして、しばらく柊さんと話していたが、俺は不思議に思うことが一つあった。
ここ、客がいない。 周りには、沢山のテーブルがあるのに、客は俺たちだけだ。
なんでこんなに客が少ないのだろう。
丸菜学園から歩いて五分ほど。そんな近い喫茶店に高校生が来ないわけないのに。
それに、年配の人もいない。
常連しか来ないような喫茶店なのだろうか。
こんな店よりも、マイドナルドのような有名店の方が良かったかもしれない。ていうか、なんで俺はこんな店を選んだのだろう。
……メロンソーダ、美味しければいいのにな。
「ほい、お待ちどうさまー」
そういうと、さっきの女の人がメロンソーダが入ったコップを木製のテーブルの上においてくれた。
「ありがとうございます」
二人でお礼をいう。その後で、飲んでみる。
パチパチする感じにメロンの味。完全なメロンソーダだ。
柊さんの顔が楽しそうに微笑んでいた。
それを見ていたら、なんかこういうのっていいなーって思った。
「美味しい?」
微笑んでいる柊さんに聞いてみると、彼女は頷いた。
「うん、美味しい」
いままでの彼女にはなかなか見れない楽しそうな笑みだった。
しばらくして、メロンソーダも飲み終わり、お金を払って店を出ることにした。
そして、そのまま二人は別れて家に向かい、少し楽しい放課後は終わった。
【第八話 END】