複雑・ファジー小説
- Re: 必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話 ( No.63 )
- 日時: 2013/11/04 15:04
- 名前: 凰 ◆ExGQrDul2E (ID: HSCcXZKf)
嘘だ、嘘だ、嘘だ。
そんなのあり得ない。なんで、なんで……!
俺は、時雨さんからノートを奪い取った。
時雨さんはそれがわかっていたのか、俺からそれを取り返そうとはしなかった。
ページをめくっていく。そこには、こんなことが書かれていた。
「3/1 隣町の町長 死」
「9/30 坂野勇太 燃える」
「10/1 時間を操るストップウォッチの創造」
「3/15 赤坂の頭にりんごが落ちる」
「3/5 白咲紫音 死」
「8/1 世界が終わるボタンの創造」
「6/10 如月霞 死」
「8/12 赤坂雄一 死」
「8/12 鈴木一斗 坂本光 死」
「8/12 白咲 葵 死」
「8/13 世界の終わりが訪れる」
「1/1 新しい世界の始まり」
……他にもたくさん。
そして、十ページ目に書かれていた言葉。
「6/17 DieApplication の創造 」
六月十七日。 それは、俺の誕生日だった。
俺の誕生日に、Die Application はつくられたのだ。
誰かの手によって。
次のページをめくる。 そこに最悪なことが書かれていないことを心から祈りながら。
「8/3 白野 夜人 死」
当たった、嫌な予感が。
このページを見た途端、全てを思い出した。
夜人と幼稚園で仲良くなったこと、 夜人と中学で初めて喧嘩をしたこと、高校でゲームを教えてもらったこと。 そして、俺の一番の親友であったこと。
その親友は、8/3 に死んでいたのだ。
なんで、そんなことを忘れていたのだ、俺は!
どうしようもなくイライラした。ノートを破りたくなる。
ーーもし、これを破ったら、俺は幸せになれるのだろうか?
そんな考えが頭をよぎる。
「さ、分かったでしょう? 台本のことを」
時雨さんが微笑んだ。
「はい。 分かりました。 では、俺は……いつ死ぬんですか?」
怒りを心の奥に閉じ込めて、 精一杯の平静で俺は聞いた。
すると、時雨さんは意外な回答をした。
「え? まだ決まってませんよ。 梅子さんが嫌がるものですから」
俺は、驚いて梅子さんを見た。
梅子さんが微笑む。
「だって、嫌なんだもの。 自分の家族の親友をこのノートのせいで殺したくなかったの」
梅子さんの目からは、光が消えていた。
【第十話 END】