複雑・ファジー小説
- Re: Re: The world of cards ( No.1 )
- 日時: 2013/09/22 22:22
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: T3.YXFX2)
Prologue
王は、この世界に一人しか存在しない。軍事力は必要ない。経済力も必要ない。頭脳も必要ではない。たった一つ、必要なことは力に貪欲であることだけだろう。それだけで、王となることは簡単だ。誰しもが、そうして王となっていった。
前回の王は、それは酷かったものだろう。暗澹とした者の存在を消し、醜い人類の感情を爆発させた。それはそれは酷い世界であったと、誰もが思うのであろうが私はそう思わない。
それは、言ってしまえば世の常であって。
感情を押し殺している人間は、きっと近しいものにあたるのだから。
終わらせたいのであれば、自由にするべきだと。そう、思う。
今の王を、壊すことが出来れば、の話ではあるが。
そこで、終わっていた。書かれてから長い時間が経っているのか、紙は薄汚れている。その紙の横には、同じように薄汚れたトランプカードが置かれていた。ジョーカーとそれ以外に分けられた54枚のトランプが。それを手に取り、トランプの柄を一枚ずつ確認していく。
J、Q、Kのカードはどの柄も、人物の顔は黒く塗りつぶされていた。そして、その人物達の手には小さなカードが握られている。不思議なデザインのそのトランプは、言葉では言い表せない魅力があった。
持参したトランプケースにトランプをしまい、ポケットへいれる。埃まみれの机の上にあったあの紙は、マッチの火で灰にした。そうすると丁度良く携帯電話の着信音が鳴り響く。誰も知らないマイナーな洋楽の曲。
曲がなり終わるまでまち、着信履歴を確認すると良く知ったあいつからだった。ニッと笑って折り返し電話をかける。
“くそが! 一回で出ろって毎回言ってんだろ、木偶の坊! てめえの脳みそは樹液でも詰まってんのか? あ?”
一発目に聞こえた怒号の後は、荒ぶった息を整える呼吸音。それで、あいつの怒りが半減したことを一方的に悟る。あいつが違うことを思っていようが、他人である自分には関係が無い。
「Sorry. Communication came to me for you,but has pretended not to know it.
So what is it integrally like to me?
The plan was carried out without a prpblem.
The cards do not have the deficiency either.
Alternatively,can there be something wanting to hear it?」
あいつは、乾いた笑いをスピーカーの先に響かせた。遠くに聞こえた女性のものと思われる喘ぎ声で、あいつがいる先がどこかの風俗店あたりであると認識する。そのことに呆れるほか無かった。
“そうか。……そうか、うん。それなら、日本に帰ってきてくれないか? そろそろ、お前の力が無いといけないようでな。んじゃ”
ぶつっと切れた携帯電話を耳からはなし、折りたたむ。携帯をポケットにしまい、歩き出した。転がる血まみれの人間達を気に掛けることも無く、寒空の下へと出て行く。
口元の血を舐めとれば、後味の悪い鉄の味がした。