複雑・ファジー小説
- ステージ1 「私立麗美高等学校」 ( No.5 )
- 日時: 2013/10/09 21:46
- 名前: 417 (ID: ptyyzlV5)
【四】
教室から出る前にきちんと近くに誰かの気配がないか確認する。片手には先程手に入れた弓を握り、何かあったときのために備えておく。
とりあえず近くに気配はない。それでも用心して物影等を気を付けながら廊下を進んでいく。
向かうのは当初の予定通り屋上である。追い詰められるとすぐにゲームオーバーが決まってしまうため、リスクはかなり高い。
しかし、だからこそ向かう理由がある。リスクが高い、それ故に、何かこのゲームにおいて有利なモノが手にはいる可能性がある。
勿論、何もない可能性だってある。あるいは逆に、何かとんでもない【ギミック】が仕掛けられているということだって、無いわけではない。
それでも今のところ屋上しか目星をつけていない。ならば闇雲に探すより、多少のリスクを含めども目星をつけている屋上へと行くのが一番だろう。
そう結論づけて、俺は階段を上る。三階、四階と駆け上がり、今度こそ屋上へとたどり着いた。
「……人はいないみたいだな」
気配を消している可能性も十分考えられる。それを考慮して、ゆっくり足を屋上へと踏み入れ、いつでも攻撃が飛んできていいように構えておく。
だがしかし、屋上には誰もいなかったらしく攻撃が飛んでくることはなかった。ホッと一息つく暇もなく屋上を急いで散策し、怪しいモノはないか確認する。
これといった何かが見つかることはなく、俺は下を見下ろすためフェンスへ近寄った。元からそうであるのか、それともギミック仕様なのか、フェンスは一部破れており非常に危険な状態になっていた。
落ちないよう気を付けながらグラウンドを見ようとフェンスに手をかける。ひんやりとした感覚がそこに伝わるとほぼ変わらないで、後ろで“バンッ!!”ととびらが閉まる音が聞こえた。
まさか、ミッション系ギミックか!?焦って後ろを振り返り、腰を落としていちでも動けるように構える。
どんな攻撃が飛んでくるのかと構えるが、しかし攻撃が飛んでくることはなかった。
「おいおい、そう構えるなって。俺はただ聞きたいことがあるだけなんだから」
代わりに飛んできたのは、そんな軽い声だった。
染めた金髪に、耳元に光るピアス。ジーパンのベルトにはシルバーアクセサリーがじゃらりと音を立てており、にへら、と浮かべるその笑みはまるで不良のそれだった。
「……用は、なんだ」
あくまで警戒体制は解かない。口調も相手を刺激しない程度に強くして男に尋ねる。
「だから警戒するなって。いや、このゲームで警戒するなってほうが無理だろうけどよ。でも俺はただ聞きたいことがあるだけなんだ。そう警戒されちゃ、困るかな」
薄っぺらい笑みを浮かべるこの男が話を聞くべきかどうか。迷った末に導きだされた俺の答えは。
「少しだけなら、話を聞く」
「へへっ、サンキュー」
男を受け入れることだった。