複雑・ファジー小説

ステージ1 「私立麗美高等学校」 ( No.7 )
日時: 2013/10/11 17:03
名前: 417 (ID: B81vSX2G)

【六】

あのあと、ギミックについて一通り説明してから今更ながらの自己紹介をした。

「俺は鹿波翔貴。一応、ギミック経験者」

「空芭見 臼時(そらばみ うすとき)。格闘技は結構得意だからよろしくな!!」

もう吹っ切れたのだろう、最初のように笑みを浮かべて男もとい空芭見はそう言った。

「で、どこいく?」

「一応、目星をつけているのは体育館。あそこは広いから闘いやすいし、色々置いてあるから武器代わりとして使えるしな」

「じゃぁ、そこに行こうぜ」

「なっ、おい!ちょっと待て!!」

バカ正直に扉から出ていこうとする空芭見を、俺は慌てて止める。扉の前でギリギリ足を止めたアイツは、不思議そうにこちらを振り返った。

「どうした?行くんだろ?」

「あぁ、けど、わざわざそこから出ていく必要ねぇよ」

「は?」

どういうことだ、と言いたげに空芭見は俺を見る。

「さっきお前のステータスの【職業】教えてもらっただろう?そのとき、お前【滑空者グライダー】っていってたじゃないか。それなら、職業特性である程度の高さからなら飛び下りることができるんだよ。屋上くらい、たぶん余裕だから俺を抱えて飛び下りろ」

「え、まじでか。確かに体が軽い気はしたけど……なるほど。そういうことなら、うん、飛び下り……ってえ?自殺?」

「ちげーよ、さっき言ったろ。大丈夫なんだって」

もちろん、俺が同じことをやっても成功しないが。

職業特性、というのはまさにそのままの意味で、自分の当てられた職業に関連する能力を無条件で一つ使えるというものだ。

こいつの職業【滑空者グライダー】の能力は跳躍力の上昇及び降下時のデメリットの無効化。様々な種類がある職業でも自由度の高さは上位に入るだろう。

その事を説明してやると「じゃあお前はどうなんだよ?」と聞かれた。

「俺の職業は【学生】。能力は……そうだな、【知識】ってところか」

「は?」

「俺もよくわかってないんだ。説明も難しい」

「ふーん。よくわかんねぇけど俺ってなんか凄いんだな」

間違ってはいないので頷いておく。そして空芭見は「よしっ!!」とフェンスに近寄った。

「ちょっと怖いけど、まぁやってやるぜ。お前を抱えて飛び下りたらいいんだよな」

「ああ。頼む」

「おう、任せとけ」

ニヤリ、と口端だけをつり上げる独特の笑みを浮かべて、空芭見は俺と共に飛び下りた。