複雑・ファジー小説

第三章『巻き込む者と巻き込まれる者』 ( No.11 )
日時: 2013/11/06 06:59
名前: シイナ (ID: 1T0V/L.3)

【2】

道を歩くこと約10分。俺はある違和感を覚えて立ち止まった。

「あれ…この道って、こんなに長かったか?」

いつも通る道。住宅街を抜けた後、交差点を避けるために通る小道である。正確な距離は分からないが、俺の足なら、5分あれば十分なハズだ。

違和感はそれだけではない。

「なんか、寒くないか…?」

夏だというのに、風が少し冷たい。

どういうことだ、と思い、考えるため足を完全に止めた、そのとき。

【GYAAAAAAAAA!!】
獣の遠吠えのような、叫び声のようなものが聞こえた。そしてさほど時間を置かずに。

「うぁっ!!」

そんな短い悲鳴と共に人が飛んでくる。驚き声が出ない俺は、その顔を確認して、更に驚く。

「あんた、柏葉か!?」
「キミは…!?」

柏葉柚葉。優香の親友らしく、話したことは無いが、何度か一緒にいるのを見たことがある。

そんな彼女が一体なぜここにいるのか。それを聞く前に第三者の声が響いた。

「ぬぅはぁっ!!おいおいもう終わりかよっ!!俺様がっかりだぜぇっ!!って、あ?一般人?ぬぅはぁっ!!僕ボク様聞いて無いんだけどっ!!」

現れたのは、黒髪に赤目の青年だった。高級そうなスーツを身に纏い、そして、手には。

「ナイフ…?」
「っち」

呟くとほとんど同時に舌打ちが隣から聞こえ、俺は腕を引っ張られた。

「【我が契約せしは死してなおその想いのみで生きる魔王なりっ!!この血に応え、今姿を現せ!!】」

「はっ!?何言って…!?」

突如叫びだした柏葉への俺の疑問は、最後まで紡がれることはなかった。何故なら。

『…我を呼んだな、娘よ』

そこに、鎧を纏った一人の男が現れたからである。