複雑・ファジー小説

第三章『巻き込む者と巻き込まれる者』 ( No.12 )
日時: 2013/11/07 17:51
名前: シイナ (ID: VhEnEiwQ)

【3】

「アイツの足止めよろしく」
『承知した』

現れた男は柏葉に頷くと腰の剣を抜いて、俺たちに背を向ける。現状が飲み込めずただ立っているだけの俺を柏葉は引っ張って、再び走り出した。

「なっ、おい!!あの人は!?」
「アイツは私なんかより全然強いから大丈夫!!詳しいことは後で説明するから今は走って!!」

焦ったようにそう言う柏葉に、俺は一瞬迷うも、ついていくことにした。

どこをどう通ったのかは全くわからないが、気がつけば大通りに出ており、あの奇妙な静けさも、嘘のような寒さも、元通りになっていた。

「ここまでくれば大丈夫だと思うよ」

隣で、僅かに息を切らせた柏葉がいう。

「なぁ、さっきのなんだよ。どうなってたんだ?」

俺が問えば、柏葉は「それは…」と少し考え込む。しかしすぐに俺を見て、彼女は言った。

「ここじゃあ話しにくいし、場所を変えよう」


▽▲▽▲▽▲▽▲


「こっちよ」

そう言って彼女が俺を案内した場所は、見覚えがありすぎる場所だった。

立派な庭を持つ、大きな日本家屋である。

柏葉は遠慮無くずかずかとその庭に入り、玄関の扉を開けた。

「あれ、境会きょうかいの魔術師だったりとか。どうしたのさ」
「部屋を一つ借りるね。こいつ、『終わらない終焉エンドレス』との勝負に巻き込まれたから説明するの」
「あぁ、成る程。そういうことなら好きに使って…」

そこまで言うと、声の主—亜季夕魔は固まった。

「え、君って、え」
「あー、昨日はありがとう」
「いや、別によかったりとか…じゃなくて。巻き込まれたのって、君?」
「今の話だとそうらしいな」

お互い状況を飲み込めてないらしい。「とりあえずあがれば?」「あぁ、そうするよ」それだけしか会話は続かなかった。

「…知り合いなの?」
「まぁ、昨日色々あったりとか」

柏葉の疑問に亜季が答えると、彼女は「ふうん」とだけ言う。

「じゃぁ、君も一緒に説明すれば?どっちにしろ、彼はこっちを知ることになるんだし」
「…そうだね。境会さえよければ同席させてもらうよ」
「構わないわ。あなたたちは第Ⅰ級だし」

とりあえず、誰か俺に説明して下さい。