複雑・ファジー小説

第四章『始動』 ( No.15 )
日時: 2013/12/19 07:19
名前: シイナ (ID: zMzpDovM)

【1】


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会えない時間ほど、充実しているものはない。

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「みぃーつけた!!私様ってばさいっこーについてるぅー!!」

そう言いながら現れたのは、あのとき柏葉を追っていた青年だった。

「境会、僕は彼を連れていく」

「お願い」

がしりと俺の腕を掴んで亜季は走りだし、やって来た青年から離れだした。

「な、おい!!柏葉は!?」

「今はあんたを守る方が先だったりとか!!とにかく走って!!」

ちらりと柏葉を見れば、彼女も「走れ!!」と叫んだ。

「おいおい、僕ボク様がそう簡単に行かせるわけねーじゃん!!」

にたりと青年の口が歪む。かと思えば、彼は一瞬でこちらまで跳んできて、

「【影縫い】」

ピタリと、その体が停止する。先程まで浮かんでいた笑みが消え、憎悪の思念が顔に浮かぶ。

「っくそ!!」

「行くよ」

「はあ!?おい!!説明しろよ!!」

「あとで!!」

ぐい、と腕を引っ張られて走りだす。青年の横を駆け抜け、家から飛び出て、わけもわからず走っていく。

振り返った一瞬に見えたのは赤いランドセルだった。

……って、ランドセル?